猫のいびきは大丈夫?心配ないいびきと受診の目安を解説

猫のいびきは大丈夫?心配ないいびきと受診の目安を解説

愛猫がソファで丸くなってぐっすり眠り、息をするたびに小さく「グー」と音を立てている。多くの場合、これはただのいびきで、リラックスして深く眠っているしるしです。気をつけたいのは、様子が変わってきたいびきです。成猫がそれまでなかったいびきを急にかき始めた、何週間かのうちに音が大きくなってきた、起きているときにも音がする、といった場合がそれにあたります。この記事では、ふつうのいびきと受診が必要な呼吸音の見分け方を解説します。あわせて、受診前に自宅で動画に撮っておきたいことや、呼吸数の数え方も紹介します。

たいてい心配いらないいびき

猫が深い眠りに入ると、のどの筋肉や軟口蓋(なんこうがい)がゆるみます。気道が少しせまくなり、ゆるんだ組織のあいだを空気が通るときに、その組織が振動します。この振動がいびきの音です。人のいびきと同じしくみで、猫が寝返りを打つと出たり止まったりすることもよくあります。

次のような場合は、たいてい心配いりません。

  • 眠っているときだけで、目を覚ますと止まる
  • 寝る姿勢が変わると、音が変わったり止まったりする
  • 以前からずっといびきをかいていて、様子が変わっていない
  • 呼吸が楽そうで、食欲があり、遊び方や毛づくろいもいつもどおりで、鼻水も出ていない

ペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンのような鼻の短い猫種(短頭種:たんとうしゅ)は、少し事情が異なります。顔が短いぶん、気道がせまい空間に詰め込まれた形になり、鼻の穴もせまいことが多いのです。そのため、ほかの猫よりいびきをかきやすくなります。せまい鼻の穴を手術で広げると、いびきや口を開けた呼吸が減ることから、こうした猫種の大きないびきは、実際に気道がせまいことから来ている場合が多いと考えられます。

短頭種の愛猫がほぼ毎晩大きないびきをかく場合は、次の受診時に獣医師に伝えましょう。安静時に口を開けて呼吸しているなら、待ってはいけません。緊急のサインです。

すぐに受診が必要な呼吸音

次のような様子があれば、すぐに動物病院へ

猫はふだん鼻で呼吸するため、口を開けて呼吸していること自体が危険なサインです。

  • 口を開けて呼吸している、または呼吸のために何度も姿勢を変えて落ち着かない
  • 息をするたびにおなかが大きく動き、呼吸に力が入っている
  • 安静にしているのに、息をするたびにピーピー、キューといった高い音がする
  • 歯ぐきや舌が青紫っぽい、灰色っぽい、またはとても白っぽい

猫は呼吸の苦しさを隠すのが上手で、目に見えるころには重症になっていることがほとんどです。呼吸が楽にできているか迷ったら、夜間でも救急を含めてすぐに診てもらいましょう。

私が働いている動物病院では、猫の状態を最初に評価するとき、呼吸もそのひとつとして見ています。すでに口を開けてハアハアと苦しそうに息をしている猫がいたら、たいていすぐに獣医師を呼びます。そのうえで獣医師が、先に酸素室(ICUケージ)で酸素吸入が必要かどうかを判断します。

いびき・ピーピー音・ゼーゼー音の見分け方

音の種類と、息を吸うときと吐くときのどちらに出るかは、気道のどこに問題があるかを獣医師が見当をつける最初の手がかりになります。言葉で伝えるか、できれば録音しておくと、診察をスムーズに始められます。

聞こえる音主に出ている場所考えられること
いびきのような低い音や、鼻を鳴らすような音鼻、またはのどの奥眠っているときだけなら、ふつうのいびきです。起きているときにも出る場合や新しく始まった場合は、鼻づまりや、鼻やのどに何かがつまっている可能性があります
ピーピー、キューといった高い音。多くは息を吸うときに出る(吸気性喘鳴:きゅうきせいぜんめい)喉頭(こうとう)や気管のどのどこかがせまくなっている可能性があります。いびきより急を要し、呼吸に力が入っていたり声が変わったりしている場合は特に注意が必要です
主に息を吐くときに出るゼーゼーという音(呼気性喘鳴:こきせいぜんめい)。または体を低くかがめ、首を前に伸ばしてする咳下部気道猫喘息(ぜんそく)や気管支炎のことが多く、その咳は毛玉を吐こうとする仕草と間違えやすいです

咳をしている猫は、毛玉を吐こうとしている猫とよく似て見えます。体を低くかがめ、首を前に伸ばし、えずくような仕草をします。こうした様子がたびたびあるのに毛玉がまったく出てこない場合は、動画を撮って獣医師に見せましょう。

呼吸のトラブルと間違えられやすい、口から出る音もあります。歯をカチカチ鳴らしたり、あごを震わせたりする様子で、特に食事中によく見られます。これは歯の痛みを示していることが多く、詳しくは歯の健康の記事で解説しています。

猫がいびきをかき始める原因

これまでいびきをかかなかった猫がかき始めたときや、いびきの様子が変わったときは、一緒に見られるサインが原因をしぼる手がかりになります。

鼻水やくしゃみをともなういびき。 1〜2週間ほど鼻がつまったような音がする場合、よくある原因は上部気道感染症(じょうぶきどうかんせんしょう)、いわゆる「猫風邪」です。鼻づまりが治まるにつれて、音もたいてい落ち着きます。なかには慢性鼻炎と呼ばれる鼻の炎症が長く残り、何か月も鼻をグズグズ鳴らし続ける猫もいます。猫の鼻の組織を調べる生検(せいけん)では、慢性鼻炎が最も多い診断です。慢性鼻炎についてはくしゃみの記事で詳しく解説しています。

くしゃみの発作や、前足で顔をこする様子をともなう急ないびき。 草の葉など、何かが鼻やのどの奥につまっているかもしれません。急に始まることが多く、鼻水などの症状が片側だけに出ることもよくあります。

若い猫で続くいびき。 鼻咽頭ポリープ(びいんとうポリープ)は、鼻の奥にできて空気の通り道をふさぐ良性のできものです。主に5歳くらいまでの猫に見られますが、どの年齢でもできることがあります。起きているときも続くいびきが典型的で、声の変化や飲み込みにくさをともなうこともあります。

成猫・シニア猫で新しく始まったいびき。 鼻の奥の気道がせまくなる鼻咽頭狭窄(びいんとうきょうさく)は、成猫でいびきが続く原因になります。高齢の猫では、鼻の腫瘍も原因のひとつです。最も多いのはリンパ腫で、10歳前後で見つかることが多く、いびきのような音がよく見られます。鼻炎と比べると、腫瘍では片方の鼻の穴だけから出る鼻水、血の混じった鼻水、呼吸の苦しさが出やすくなります。いびきをかく猫のほとんどは、ここまで深刻な病気ではありません。ただ、高齢の猫に新しくいびきが出てきたら、一度診てもらいましょう。

受診前に記録しておきたいこと

呼吸の音は、動物病院に着いたとたんに止まってしまうことがよくあります。家での様子を記録して持っていきましょう。

動画を撮る。 愛猫を起こさないように、顔と胸の両方が映るようにして、音声つきで30秒ほど撮影します。起きているときにも音がするなら、その様子も撮っておきましょう。

パターンをメモする。 いつから始まったか、眠っているときだけか起きているときにも出るか、姿勢で変わるか、どのくらいの頻度かを書き留めます。あわせて、鼻水の様子(片側か両側か、透明か、色がついているか、血が混じっているか)、くしゃみ、声の変化、食欲、飲み込みの様子も書き留めておきます。

睡眠時の呼吸数を数える。 愛猫が眠っていて、のどをゴロゴロ鳴らしていないときを選びます。胸の動きを見て、ふくらんで戻るまでを1回と数えます。30秒間数えて、その回数を2倍にしましょう。健康な成猫の場合、眠っているときの呼吸数は1分間に約20回で、ふつうは30回未満です。1分間に30回を超えたら、時間をおいてもう一度数えてみてください。何度数えても30回を超える場合は、かかりつけの動物病院に連絡しましょう。動物病院では、猫の呼吸数は大幅に増えます。ある研究では、健康な猫の呼吸数は自宅で眠っているときは1分間に約20回だったのに対し、診察室では約64回でした。獣医師の判断に役立つのは、自宅で数えた数字です。この呼吸数が心臓病の早期のサインにもなる理由は、肥大型心筋症(HCM)の記事で解説しています。

いびきをかく猫を動物病院に連れていく目安

次の場合は、当日中にかかりつけの動物病院に連絡しましょう。

  • 睡眠時の呼吸数が何度数えても1分間に30回を超える(特に心臓病のある猫)
  • 鼻血、または血の混じった鼻水
  • 咳の発作を繰り返す、または食欲や元気の低下をともなう風邪の症状

次の場合は、早めに予約をとって受診しましょう。

  • これまでいびきをかかなかった成猫が、いびきをかき始めた
  • 何週間かのあいだに、いびきが大きくなってきた
  • 起きているときにも、いびきのような音が2週間ほど以上続く
  • 片方の鼻の穴だけから鼻水が出る
  • 顔や鼻の上が腫れている
  • 声が変わった、または飲み込みにくそうにしている
  • 毛玉を吐こうとするような咳がときどきあるのに、毛玉が出てこない

Furwise でできること

いびきはゆっくり変化するため、先月より大きくなったかどうかを記憶だけで判断するのは難しいものです。Furwiseなら、いびきに気づいたときにその都度症状として記録し、写真を添え、睡眠時の呼吸数をメモに書いておけるので、何週間分もの変化をあとから振り返れます。受診のときは、その経過をそのまま獣医師に見せられます。

よくある質問

猫がいびきをかくのは普通ですか? はい、深く眠っているときにたまにいびきをかくのは普通のことです。寝る姿勢でいびきが変わり、ほかに気になる様子がなければ、特に心配いりません。鼻の短い猫種は、気道の形の関係でいびきをかきやすい傾向があります。成猫で新しくいびきが始まった、だんだん大きくなっている、起きているときにも音がする、鼻水や呼吸の苦しさをともなう、といった場合は動物病院を受診しましょう。

いびきをかいている猫は起こしたほうがいいですか? 起こす必要はありません。そっと見守るほうが多くのことがわかります。呼吸数を数え、おなかが大きく動いていないか、口が開いていないかなど、呼吸に力が入っているサインがないか確認しましょう。

眠っている猫の呼吸数は1分間に何回が正常ですか? 健康な成猫では、眠っているときの呼吸数は平均で1分間に約20回で、たいてい30回未満です。愛猫が眠っていて、のどを鳴らしていないときに30秒数え、2倍にしましょう。何度数えても1分間に30回を超える場合は、動物病院に連絡してください。

太っている猫はいびきをかきやすいですか? 猫についての研究はほとんどありません。人では体重の増加がいびきの原因のひとつとして知られているため、関連がある可能性はあります。適正体重を保つことは、ほかにもさまざまな理由で大切です。適正体重の保ち方は肥満の記事で解説しています。

起きているときに鼻がつまったような音がするのはなぜですか? 起きていて組織がゆるんでいないのにいびきのような音がする場合、鼻やのどのどこかで空気の通り道がせまくなっています。最も多い原因は風邪で、たいてい2週間ほどで治まります。食べなくなった場合は、早めに受診しましょう。音がそれより長く続く、鼻水などが片側だけに出る、高齢の猫で始まった、といった場合は、ポリープや狭窄、腫瘍がないか獣医師に診てもらいましょう。

参考文献

  1. Ljungvall, I., Rishniw, M., Porciello, F., Häggström, J., & Ohad, D. (2014). Sleeping and resting respiratory rates in healthy adult cats and cats with subclinical heart disease. Journal of Feline Medicine and Surgery, 16(4), 281-290. PubMed
  2. Dijkstra, E., Teske, E., & Szatmári, V. (2018). Respiratory rate of clinically healthy cats measured in veterinary consultation rooms. The Veterinary Journal, 234, 96-101. PubMed
  3. Farnworth, M. J., Chen, R., Packer, R. M. A., Caney, S. M. A., & Gunn-Moore, D. A. (2016). Flat feline faces: is brachycephaly associated with respiratory abnormalities in the domestic cat? PLoS ONE, 11(8), e0161777. PMC
  4. Gleason, H. E., Phillips, H., Fries, R., et al. (2023). Ala vestibuloplasty improves cardiopulmonary and activity-related parameters in brachycephalic cats. Veterinary Surgery, 52(4), 575-586. PubMed
  5. Henderson, S. M., Bradley, K., Day, M. J., et al. (2004). Investigation of nasal disease in the cat: a retrospective study of 77 cases. Journal of Feline Medicine and Surgery, 6(4), 245-257. PubMed
  6. Ferguson, S., Smith, K. C., Welsh, C. E., & Dobromylskyj, M. J. (2020). A retrospective study of more than 400 feline nasal biopsy samples in the UK (2006-2013). Journal of Feline Medicine and Surgery, 22(8), 736-743. DOI
  7. Champetier, A., Lemetayer, J., Ruel, Y., et al. (2024). Nasopharyngeal stenosis in cats: a retrospective study of 21 cases comparing endoscopic and surgical treatment (2018-2022). Journal of Feline Medicine and Surgery, 26(11). PubMed
  8. Day, M. J., Henderson, S. M., Belshaw, Z., & Bacon, N. J. (2004). An immunohistochemical investigation of 18 cases of feline nasal lymphoma. Journal of Comparative Pathology, 130(2-3), 152-161. PubMed
  9. Merck Veterinary Manual. (2025). Inflammatory Polyps in Cats. Merck
  10. Cornell Feline Health Center. Dyspnea (Difficulty Breathing). Cornell University
  11. International Cat Care. Asthma and chronic bronchitis in cats. iCatCare
  12. Rao, S. M. (2023). Feline tooth resorption: treatment options. University of Illinois College of Veterinary Medicine. Illinois

執筆 · Furwise 創設者、動物病院アシスタント