猫のくしゃみが止まらない|原因・猫風邪・受診の目安を解説

猫のくしゃみが止まらない|原因・猫風邪・受診の目安を解説

愛猫がくしゃみをすると、風邪をひいたのかなと気になりますよね。たまに1〜2回くしゃみをするだけなら、ほとんどの場合は心配いりません。私たちと同じで、鼻に入った刺激を外に出しているだけです。ただ、何日も続いたり、立て続けに出たり、鼻水や目やにをともなったりする場合は、別のサインのことがあります。この記事では、くしゃみの主な原因と、一時的な刺激によるくしゃみと受診が必要な状態の見分け方を解説します。

注意したいくしゃみとは

くしゃみは反射のひとつで、鼻に入った刺激物を空気の勢いで外へ追い出す反応です。ほこり、飛び散った猫砂のかけら、自分のひげが鼻に触れること、ふわっと漂った香水のにおいなど、きっかけはさまざまです。1〜2回くしゃみをしたあと、すぐにグルーミングや昼寝に戻る猫なら、大きな心配はいりません。

注意したいのは「パターン」です。何日も続けてくしゃみが出る、立て続けに何度も出る、あるいはくしゃみと同時に別の症状が出ているときは、体からのサインかもしれません。大切なのは、ほかにどんな様子があるかです。鼻水、涙目や目やに、食欲の低下、元気のなさなど。くしゃみそのものより、くしゃみと一緒に出ているサインに目を向けてみましょう。

最も多い原因は「猫風邪」

くしゃみがなかなか止まらないとき、最も多い原因は上部気道感染症(じょうぶきどうかんせんしょう)、いわゆる「猫風邪」です。猫風邪は猫にとても多い病気で、保護施設や多頭飼いの環境など、猫が密集して暮らす場所では特に広がりやすくなります。家に迎えた時点で、すでに病原体を持っている猫も少なくありません。

ほとんどのケースは、2種類のウイルスが関わっています。

猫ヘルペスウイルス(FHV-1)

猫ヘルペスウイルス(FHV-1)は、猫のくしゃみを引き起こす代表的なウイルスです。初めて感染すると、立て続けのくしゃみ、鼻水、結膜炎が見られ、発熱や食欲不振をともなうこともあります。やっかいなのはその後です。回復した猫の多くはウイルスを生涯持ち続け、ウイルスは体内にひそんだまま、ストレスがかかったときに再び症状を出します。引っ越し、新しい同居動物、ペットホテルへの預け入れ、ほかの病気などがきっかけになります。最初の感染から何年もたってから、新しい猫がいないのにくしゃみがぶり返すのは、このためです。

猫カリシウイルス(FCV)

猫カリシウイルス(FCV)もくしゃみや鼻水を起こしますが、特徴的なのは口内炎です。舌や歯ぐきに痛みのある潰瘍(かいよう)ができ、よだれが出たり食べたがらなくなったりします。ウイルスの種類によっては、子猫で一時的に足を引きずる症状が出ることもあります。ヘルペスウイルスと同じく、見た目が回復したあとも、数週間から数か月にわたってウイルスを排出し続けることがあります。

細菌が関わるケース

猫クラミジア、ボルデテラ、マイコプラズマといった細菌も、単独で気道の感染症を起こすことがあり、結膜炎が目立つことが多いです。ただ、より多いのは、ウイルス感染のあとに細菌が二次的に加わるパターンです。さらさらした透明な鼻水が、ねばついた黄色や緑色に変わるのは、多くの場合この二次感染が原因です。ただし、重いウイルス感染だけでも同じように変化することがあります。

完全室内飼いの猫が猫風邪になる理由

これは多くの飼い主さんが意外に思う点です。ヘルペスウイルスは生涯にわたって体内にひそむため、子猫のころに感染した猫(一腹の子猫や保護施設ではとても多いことです)は、生涯ウイルスを持ち続けます。再発に外からの新しい感染は必要なく、きっかけは体の内側にあります。ストレスで免疫の働きが落ちると、ひそんでいたウイルスが再び活性化するのです。ですから、完全室内飼いで1頭飼いでも、猫風邪にならないとは限りません。新しく感染する可能性が低いだけで、昔の感染がぶり返すことはあります。

くしゃみのその他の原因

くしゃみをする猫がすべて感染症とは限りません。ほかにもいくつか知っておきたい原因があります。

原因見られる様子よくある手がかり
刺激物の吸い込み接触の直後にくしゃみが出て、その後おさまるほこりっぽい猫砂、たばこの煙、スプレー、香水と関連
異物突然始まり、止まらない激しいくしゃみ片側だけのことが多く、鼻や顔を前足でかくことも
歯の病気慢性的なくしゃみや、片側だけの鼻水が続く上の歯の歯根の感染が鼻腔(びくう)に及ぶことがある
鼻腔ポリープや腫瘍片側に出て、ゆっくり悪化する症状高齢の猫に多く、出血や顔の腫れをともなうことも

刺激物の吸い込みは、この中では最も心配の少ない原因です。ほこりの少ない猫砂に変えたり、猫の近くでスプレーやたばこを使わないように気をつけたりすれば、たいていおさまります。異物はもう少し急を要します。多くは草の葉や種で、くしゃみが急に激しく出て止まらず、動物病院で見つけて取り除く必要があります。歯の病気をここに挙げたのは、上の歯の歯根が鼻腔のすぐ下にあるためです。重い歯の感染症が鼻腔まで及ぶと、慢性的なくしゃみの原因になります。高齢の猫で、くしゃみが片側でゆっくり悪化し、出血や顔つきの変化をともなう場合は、早めに受診しましょう。鼻腔ポリープや腫瘍は年齢とともに増えるためです。

くしゃみと一緒に確認したいサイン

鼻水の状態は多くのことを教えてくれます。さらさらした透明な鼻水は、ウイルス感染や単なる刺激を示すことが多いです。ねばついた黄色や緑色の鼻水は、細菌が加わっているサインです。血が混じっている場合は、早めに動物病院に連絡しましょう。

目もよく見てあげましょう。涙目、充血、目を細める、片目が半分または完全に閉じているといった様子は、結膜炎のサインです。重症例では、ヘルペスウイルスに関連した角膜潰瘍(かくまくかいよう)がみられることもあります。猫の目のトラブルは進行が早いため、自己判断で様子を見ず、早めに受診しましょう。

呼吸と元気も大切なサインです。苦しそうに呼吸する、口を開けて呼吸する、おなかが大きく動いているといった様子は、ただの鼻づまりではなく緊急事態です。翌朝まで待たずに対応しましょう。引っ込み思案になって隠れ、いつもの行動をしなくなった猫も同じです。そして食欲は、最も大切なサインなので、しっかり見てあげてください。

動物病院を受診すべきタイミング

軽い猫風邪の多くは、人が軽い風邪を乗り切るように、自宅でケアできます。ただし、次のような様子が見られたら、専門家に任せるタイミングです。

食べなくなった猫は緊急事態です

猫は食欲がにおいに大きく左右される動物です。鼻がつまってにおいがわからないと、食べるのをやめてしまうことがあります。食べない状態が続くと猫はあっという間に弱り、数日にわたって食事が不足すると、肝リピドーシス(脂肪肝)という深刻な肝臓の病気を引き起こすことがあります。特に太り気味の猫は注意が必要です。様子を見て待たず、24時間食べていない場合は動物病院に連絡してください。

食欲のほかに、次のような様子があれば受診しましょう。

  • 苦しそうな呼吸や、口を開けた呼吸
  • ねばついた黄色や緑色の鼻水、または血の混じった鼻水
  • 腫れた目、固く閉じた目、見てわかる潰瘍
  • 7〜10日を超えて続く、または繰り返すくしゃみ
  • 元気がない、隠れる、いつもの様子と明らかに違う
  • 上記のいずれかが見られる子猫(子猫は急に悪化します)

自宅でできるケア

軽症であれば、ケアの中心は支持療法(しじりょうほう)です。目的はシンプルで、愛猫を楽な状態に保ち、食べられるようにしながら、あとは免疫の働きにまかせることです。

蒸気はとても役立ちます。熱いシャワーを出した浴室で、愛猫と10〜15分ほど一緒に過ごすと、湿気で鼻づまりがやわらぎ、呼吸が楽になります。そのあとで、やわらかい布を温かい湯で湿らせ、鼻と目のまわりの分泌物をやさしく拭き取ってあげましょう。鼻がかさぶたで固まると、不快なうえに呼吸もしづらくなります。

食事は最も大切な部分です。においがわからない猫は食べたがらないことが多いので、ウェットフードを少し温めて香りを引き出し、においの強いものを選んであげてください。水も飲みやすい場所に置いておきましょう。鼻づまりや軽い発熱は、どちらも脱水につながりやすいためです。水分補給についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。さらに、温かく静かな休める場所を用意してあげると回復を助け、ヘルペスウイルスの場合は症状の長引きも防ぎやすくなります。猫風邪は猫から猫へ簡単にうつるので、回復するまでは、くしゃみをしている猫をほかの同居猫から離しておきましょう。

治療で本当に効果があること

正直なところ、ウイルス性の猫風邪の多くは自然に治ります。合併症のないケースは、たいてい1〜2週間ほどで治まりますが、長引いたり再発したりすることもあります。そして、ウイルスそのものを治す薬はありません。治療とは、免疫が働いている間、愛猫を支えてあげることです。

獣医師が抗生物質を処方することもありますが、それは細菌が関わっているとき、つまり細菌そのものが原因の場合や、ウイルス感染のあとに細菌の二次感染が加わった場合に限られます。抗生物質はウイルスそのものには効きません。重いヘルペスウイルス感染、特に目の症状が強い場合には、ファムシクロビル(famciclovir)などの抗ウイルス薬や、結膜炎や角膜潰瘍のための点眼薬が加えられることがあります。

ひとつ、避けてよいものがあります。リジン(L-lysine)です。長年にわたってヘルペスウイルス対策の定番として勧められ、今も店頭や記事で見かけますが、現在の研究はこれを支持していません。研究のレビューでは、リジンのサプリメントは猫のヘルペスウイルスの病気を予防も軽減もしないとされており、今では推奨される治療法ではなくなっています。その手間をかけるなら、ストレスを減らし、愛猫が食べられるようにすることに使うほうが役立ちます。

くしゃみを予防するには

猫を完全にくしゃみと無縁にすることはできませんが、かかる可能性と重症度の両方を下げることはできます。

コアワクチンである3種混合ワクチンは、ヘルペスウイルスとカリシウイルスの両方をカバーします。感染を完全に防いだり、ウイルスを持ち続ける状態をなくしたりはできませんが、発症のリスクを下げ、もし発症しても症状を軽くする効果が期待できます。これは確かなメリットで、コアワクチンとされる主な理由です。

ワクチン以外では、日常のストレスを低く保つことが大切です。ストレスはヘルペスウイルスがぶり返す主なきっかけだからです。ほこりの少ない猫砂を使って気道への負担を減らしましょう。新しい猫を迎えるときは、対面させる前に2週間ほど別の部屋で過ごさせると、感染がひそんでいた場合に先に症状が現れることがあります。猫風邪が広がってしまったときは、共用の食器や寝具をこまめに洗いましょう。ウイルスは直接の接触だけでなく、物を介しても広がるためです。

Furwise でできること

くしゃみのような不調は、経過が見えると対応がぐっと楽になります。Furwiseでは、症状を記録したり、鼻や目の分泌物を写真に残したり、食欲や元気を日ごとにメモしたりできます。動物病院に行くとき、いつから・どのくらいの頻度で・よくなっているのか悪くなっているのか、といった本当に大切な質問に、記憶やカメラロールをさかのぼらずに答えられます。

たまに出るくしゃみは、猫が猫らしく過ごしているだけのことがほとんどです。ただ、くしゃみが頻繁で、鼻水や目やに、食欲の低下をともなうときは、多くの場合は猫風邪です。そしてその多くは、休養と蒸気、少しの根気で治っていきます。最も大切な目安は食欲です。食べ続けている猫は自宅でケアできることが多く、食べなくなった猫は早めの受診が必要です。迷ったときは、鼻水の色と愛猫の元気が、いちばんの判断材料になります。

よくある質問

猫がくしゃみを繰り返すのはなぜですか? 何日も続けてくしゃみを繰り返す場合、最も多い原因は上部気道感染症、いわゆる「猫風邪」で、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスによるものです。ほかにも、刺激物の吸い込み、鼻に入った異物、歯の病気、高齢の猫では鼻腔ポリープや腫瘍などが原因になります。くしゃみに鼻水や目やに、食欲の低下をともなう場合は、動物病院で診てもらいましょう。

猫のくしゃみは人にうつりますか? うつりません。猫風邪を起こすウイルス、猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスは猫に特有のもので、人には感染しません。ただし、猫から猫へは非常にうつりやすいため、くしゃみをしている猫は家のほかの猫から離しておきましょう。なお、体調の悪い猫にふれたあとは手を洗う習慣をつけておくと安心です。

猫に人間の風邪薬を与えてもいいですか? いけません。人間用の風邪薬やインフルエンザ薬を猫に与えては絶対にいけません。よく含まれるアセトアミノフェンや鼻づまりの薬(充血除去薬)などの成分は猫には有毒で、少量でも危険なことがあります。基本的な自宅ケアを超える対応は、獣医師の判断にゆだねてください。

アレルギーで猫はくしゃみをしますか? 思われているほど多くはありません。人とは違い、猫のアレルギーは皮膚のかゆみとして出ることが多く、くしゃみとして出ることはあまりありません。くしゃみを繰り返す場合は、感染症か、ほこりっぽい猫砂やスプレーといった物理的な刺激物が原因のことのほうがずっと多いです。

くしゃみをする猫はいつ動物病院に連れていくべきですか? 食べなくなった、苦しそうに呼吸する、口を開けて呼吸する、ねばついた黄色や緑色の鼻水や血の混じった鼻水が出る、目が腫れたり閉じたりしている、くしゃみが1〜2週間を超えて続く、といった場合は受診しましょう。子猫や、元気がなく様子のおかしい猫は、早めに連れていってあげてください。

リジン(L-lysine)は猫のヘルペスウイルスに効果がありますか? 現在の研究は効果を支持していません。リジンは長年勧められ、今も購入できますが、研究のレビューでは猫のヘルペスウイルスの病気を予防も軽減もしないとされています。ストレスを減らし、愛猫がしっかり食べられるようにするほうが役立ちます。

参考文献

  1. Cornell Feline Health Center. (2024). Feline Upper Respiratory Infection. Cornell University
  2. Thiry, E., et al. (2009). Feline Herpesvirus Infection: ABCD Guidelines on Prevention and Management. Journal of Feline Medicine and Surgery, 11(7), 547-555. DOI
  3. Radford, A. D., et al. (2009). Feline Calicivirus Infection: ABCD Guidelines on Prevention and Management. Journal of Feline Medicine and Surgery, 11(7), 556-564. DOI
  4. Bol, S., & Bunnik, E. M. (2015). Lysine supplementation is not effective for the prevention or treatment of feline herpesvirus 1 infection in cats: a systematic review. BMC Veterinary Research, 11, 284. DOI