丸々とした猫はかわいく見えるので、少し太っていてもあまり気にならないものです。ですが、家庭で飼われている猫の約40〜50%は太りすぎか肥満で、気づかれていないことも少なくありません。体型は自宅でも、触って、見て確かめられます。
体重管理が大切な理由
私が勤めている動物病院でも、肝臓の病気や糖尿病を抱えた猫の多くが、以前はかなり太っていました。獣医師から「自分の家の猫を太らせすぎないように」と、しみじみ言われたこともあります。
| 健康リスク | 詳細 |
|---|---|
| 糖尿病 | 肥満の猫は適正体重の猫と比べて糖尿病の発症リスクが約4倍 |
| 変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう) | 余分な体重が関節軟骨の摩耗を加速させ、慢性的な痛みの原因に |
| 心血管への負担 | 太っている分だけ、心臓の仕事量が増える |
| 泌尿器の問題 | 肥満は泌尿器疾患との関連が指摘されている |
| 麻酔のリスク | 手術時の合併症リスクが高まる |
| 死亡リスクの上昇 | 8〜12歳の肥満の猫は、痩せている猫と比べて死亡率が約2.8倍 |
ただし、体重は管理できます。まずは愛猫が今どの状態にあるのかを正しく把握することが第一歩です。
ボディコンディションスコア(BCS)とは
体重計の数字だけでは、愛猫の体型を正確に評価できません。同じ5kgでも、メインクーンなら痩せすぎですし、小柄な猫なら太りすぎかもしれません。
獣医師が使っているのが「ボディコンディションスコア(BCS)」という指標です。動物病院では9段階の評価法が最もよく使われており、世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインもこの方法を採用しています。
評価の方法
BCSの評価には見ることと触ることの両方が必要です。チェックする部位は3か所あります。
1. 肋骨(ろっこつ)
手のひらで愛猫の肋骨のあたりを軽くなでてみましょう。強く押す必要はありません。理想的な状態では、軽く触れるだけで肋骨を感じ取れますが、外見からはっきり肋骨の形は見えません。太りすぎの場合は、しっかり押し込まないと肋骨に触れられなかったり、まったく触れなかったりします。
2. 腰のくびれ
愛猫を真上から見下ろしてみましょう。理想的な状態では、肋骨の後ろに腰のくびれが確認できます(砂時計の上部のような形)。太りすぎの場合は、くびれがなく、体が楕円形や四角形に見えます。
3. おなか
横から見てみましょう。理想的な状態では、胸から後ろにかけておなかのラインが少し上に引き締まっています。太りすぎの場合は、おなかが垂れ下がっているか、地面と平行になっています。
BCS評価表
| スコア | 体型 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1〜3 | 痩せすぎ | 肋骨、脊椎、骨盤が目視で確認できる。脂肪がほとんどない |
| 4 | やや痩せ気味 | 肋骨が簡単に触れ、わずかに見えることも。くびれがはっきりしている |
| 5 | 理想的 | 肋骨は薄い脂肪の層を通して容易に触れる。上から見てくびれがあり、おなかは引き締まっている |
| 6 | やや太りすぎ | 肋骨を触るのにやや力がいる。くびれが目立たなくなっている |
| 7 | 太りすぎ | 肋骨が触りにくい。くびれが消え、おなかが丸みを帯び始めている |
| 8〜9 | 肥満 | 肋骨がまったく触れない。おなかが明らかに垂れ下がり、上から見て体が丸い |
図で確認したい場合は、WSAVAのBCS評価表(PDF)を参考にしてください。
目標はBCS 5です。 6になったら体重に気を配り始め、7以上なら獣医師に相談しましょう。
筋肉量にも目を向ける
BCSは脂肪の量を評価するもので、筋肉は含まれていません。体全体は丸く見えるのに、背中の脊椎や肩甲骨(けんこうこつ)が目立つ猫がいます。「太りすぎ」と「筋肉の衰え」が同時に起きているケースです。
こうした状態は特に10歳以上の猫に多く見られます。体重は変わっていなくても、背中の筋肉が明らかに減ってきたら、一度獣医師に診てもらいましょう。
猫が太りやすい理由
避妊・去勢後の代謝変化
避妊・去勢手術を受けると、必要カロリーが約20〜25%下がり、同時に食欲が増すことがあります。これまでと同じ量のフードを与え続けると、体重が増えやすくなります。
手術後は、獣医師にフード量を計算し直してもらいましょう。体重から1日のカロリーを出し、フードのグラム数に換算する方法は、愛猫の食事ガイドで解説しています。
置き餌(おきえさ)
ドライフードを一日中出しっぱなしにして自由に食べさせるスタイルは、肥満の大きな原因のひとつです。野生の猫は「少量を何度も食べる」ハンターですが、お皿にいつもフードがあると、多くの猫はつい食べ続けてしまいます。
定時定量の食事(1日2〜3回)に切り替えるだけでも、大きな改善が期待できます。
室内飼いの生活
室内飼いの猫は外で暮らす猫に比べて活動量が少なく、消費カロリーも低くなります。家の中ですることが少ないと、退屈しのぎに食べてしまう猫もいます。
遊びの時間を増やしたり、キャットタワーやパズルフィーダーを用意したりすると、体を動かす機会が増え、退屈から食べることも減ります。
愛猫の体型を低く見積もりがち
飼い主さんが評価する愛猫の体型は、獣医師の評価より1〜2ポイント低め(痩せていると思いがち)であることがわかっています。「少しぽっちゃり」を「普通」と感じていると、太りすぎに気づけません。
診察で獣医師が「少し太りすぎですね」と伝えると、最初はなかなか認めたがらない飼い主さんも少なくありません。食べるのが好きなのは動物の本能だ、と感じるのでしょう。獣医師は体重と体型の両方を見て判断し、食事の管理をお願いします。体重管理用の療法食に切り替えることもあります。
健康的な体重を維持するために
食事の見直し
定時定量の食事が基本です。1日2〜3回に分けて、計量したフードを与えましょう。できればウェットフードを取り入れましょう。ドライフードよりタンパク質が多く炭水化物が少ないうえ、水分が70〜80%あるので満腹感を得やすくなります。愛猫に必要な1日のカロリー量は、獣医師に確認してみてください。おやつは1日の総カロリーの10%以内に抑えましょう。
運動量を増やす
毎日少なくとも15〜20分は、猫じゃらしなど実際に捕まえられるおもちゃで愛猫と遊びましょう。レーザーポインターを使うときは、最後に必ず本物のおもちゃを捕まえさせて終わりにしてあげてください。フードパズルを使うと、食事そのものが運動になります。キャットタワーや棚板で上下に動ける空間を作ってあげると、日常の活動量が自然と増えます。多頭飼いの場合は、食器や水飲み場、休める場所を猫の数に合わせて用意すると、ストレスからくる食べすぎを防げます。
減量のペース
重要な注意
猫の減量は絶対に急いではいけません。急に食べる量が大きく減ると、体は大量の脂肪を肝臓へ送り込み、肝リピドーシス(脂肪肝)を起こすことがあります。命に関わる病気です。
安全な減量ペースは、1週間あたり体重の0.5〜2%です。1kgの減量が必要な猫なら、3〜6か月ほどかかります。
減量プログラムは獣医師の指導のもとで行うのが理想的です。特にBCS 8〜9の肥満状態にある猫は、必ず獣医師に相談してから始めましょう。
動物病院を受診すべきタイミング
BCSが7以上ある場合や、短期間で体重が大きく変動した場合は、獣医師に相談しましょう。食事を調整しても体重が増え続ける、理想体重がわからない、減量を始めたいといった場合も受診の目安です。
獣医師はまず、甲状腺(こうじょうせん)の病気など、体重変化の裏にほかの病気がないかを確認し、そのうえで愛猫に合った食事の計画を一緒に立ててくれます。
体重の記録をつける
1回の体重測定だけでは十分な情報は得られません。2〜4週間ごとに量って記録しておくと、変化に早く気づけます。
体重測定のコツ
ベビースケールを使うか、愛猫を抱いて体重計に乗り、自分の体重を引く方法が手軽です。毎回だいたい同じ時間帯に量ると、前回の数字と比べやすくなります。
ふだんから肋骨を触り、くびれとおなかのラインを見る習慣をつけて、BCS 5を目指しましょう。今それより高い場合は、食事の見直しと遊びの時間から、ゆっくり始めてください。
よくある質問
猫が太りすぎかどうか、どうすればわかりますか? ボディコンディションスコア(BCS)で判断しましょう。肋骨のあたりを手で触り、上から腰のくびれを確認し、横からおなかのラインを見ます。肋骨がなかなか触れない、くびれがない、おなかが垂れている場合はBCS 7以上の可能性があるので、獣医師に相談しましょう。
猫の減量はどのくらいのペースが安全ですか? ゆっくりが鉄則です。1週間あたり体重の0.5〜2%が目安で、1kg減らすには3〜6か月ほどかかります。急に減らすと肝リピドーシス(脂肪肝)を起こすことがあり、命に関わります。
室内飼いの猫は太りやすいですか? 太りやすい傾向があります。室内飼いの猫は活動量が少なく、退屈から食べてしまう猫もいます。定時定量の食事、パズルフィーダー、毎日の遊びの時間が役立ちます。
参考文献
- WSAVA Global Nutrition Committee. (2020). Body Condition Score - Cat. WSAVA
- Cornell University College of Veterinary Medicine. (2024). Obesity. Cornell Feline Health Center
- Saavedra, C., et al. (2024). Overweight and obesity in domestic cats: epidemiological risk factors and associated pathologies. Journal of Feline Medicine and Surgery. PMC
- Teng, K.T., et al. (2018). Associations between neutering and obesity in domestic cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 20(12), 1054-1064.
- German, A.J. (2006). The growing problem of obesity in dogs and cats. The Journal of Nutrition, 136(7), 1940S-1946S. PubMed
- Scarlett, J.M., & Donoghue, S. (1998). Associations between body condition and disease in cats. Journal of the American Veterinary Medical Association, 212(11), 1725-1731. PubMed