猫が吐いた|嘔吐物の見分け方と原因・受診の目安を解説

猫が吐いた|嘔吐物の見分け方と原因・受診の目安を解説

猫を飼っていれば、嘔吐物の片付けは避けて通れない経験です。たまに毛玉を吐いたり、早食いで食べ物を戻したりするのは、多くの場合それほど心配いりません。ただ、食物アレルギーや誤飲、腎臓病で吐くこともあります。吐いたものと愛猫の様子を見れば、様子を見てよいかどうか、おおよその見当がつきます。

嘔吐物の色でわかる緊急度

まずは、何を吐いたかを見てみましょう。

通常は緊急性なし
未消化のフード
食べ物がほぼそのまま出てくる。フードの形がわかる状態。早食いが原因であることがほとんど。
毛玉
暗い色の細長い塊。たまに吐く程度なら心配いりませんが、回数が増えてきたら原因を調べましょう。毛玉ガイドも参考にしてください。
経過観察が必要
黄色・緑色の液体(胆汁)
食べ物が混ざらない液体。空腹の時間が長いときに多く、特に早朝に見られます。寝る前に少量のフードを与えると改善することがあります。
白い泡状
胃が荒れているときや、毛玉を出そうとして出せなかったときに見られます。繰り返す場合は受診しましょう。
すぐに動物病院へ
ピンク色・血が混じっている
胃や食道からの新しい出血です。早めに受診しましょう。
コーヒー残渣(ざんさ)のような外観
暗褐色でざらざらしています。消化された血液で、消化管から出血しているサインです。すぐに受診してください。

色はひとつの目安で、愛猫の様子もあわせて見ることが大切です。元気な猫が一度だけ黄色い液体を吐いたのと、何度も吐いてぐったりしているのとでは、深刻さがまったく違います。

嘔吐と吐出(としゅつ)の違い

嘔吐と吐出は見た目が似ていますが、問題が起きている場所が違います。

**嘔吐(おうと)**には力が入ります。吐く前によだれを垂らしたり、口元をしきりに舐めたり、そわそわしたりして、お腹を何度も波打たせてから吐き出します。出てきたものは部分的に消化されていることが多く、原因は胃腸のこともあれば、ほかの臓器のこともあります。

**吐出(としゅつ)**には力が入りません。食べ物がするりと戻ってくる状態で、胃まで届いていないため、細長い筒状のまま、ほぼ未消化で出てきます。食後すぐに起こることが多いです。

吐出を繰り返す場合は、巨大食道症(きょだいしょくどうしょう)や食道が狭くなる病気など、食道の問題が考えられます。受診の際にどちらなのか伝えると、原因を絞り込みやすくなります。

空えずき:吐こうとしているのに何も出ない

空えずき(からえずき)は、首を前に伸ばし、お腹を波打たせて吐く動作をするのに、何も出てこない、または白い泡が少し出るだけの状態です。たまに起こる程度なら、出てこない毛玉や、空腹の時間が長すぎたことによる胃の不快感がよくある原因です。

咳の可能性があります。 猫が咳をするときは体を低くして首を伸ばすため、毛玉を吐こうとしている姿とよく似ています。えずくことが多いのに毛玉が一度も出てこない場合は、喘息などの呼吸器の病気かもしれません。次に起きたときに動画を撮って、獣医師に見せましょう。口を開けて呼吸している、歯ぐきや舌が青紫色や灰色に見える場合は、すぐに受診してください。

何も出ないえずきを繰り返し、元気や食欲もない場合。 異物や毛玉が胃や腸に詰まっている可能性があります。その日のうちに受診してください。

猫が嘔吐する主な原因

毛玉

猫は一日の多くを毛づくろいに使いますが、飲み込んだ毛のほとんどは便と一緒に出ていきます。胃に毛がたまりすぎると、吐き出して毛玉になります。ペルシャやメインクーンなどの長毛種は特に吐きやすい傾向があります。

毛玉は「何回までなら正常」という目安がありません。回数が増えてきた、えずいているのに何も出てこない、という場合は受診しましょう。頻繁な毛玉は、ストレスや皮膚トラブルで毛づくろいが増えているサインか、消化管の動きの問題かもしれません。

早食い

食べ物をほとんど噛まずに飲み込んでしまう猫がいます。胃が一気に膨らむと嘔吐が起こり、食後数分以内にほぼそのままの形で戻してしまいます。

多頭飼いではフードの取り合いが原因になることが多いので、別々の場所で食べさせましょう。早食い防止の食器やパズルフィーダー、平らなお皿にフードを広げる、1回の量を減らして回数を増やすといった工夫も効果があります。

空腹の時間が長すぎる

食事の間隔が空きすぎると、小腸から胆汁が胃に逆流して胃の粘膜を刺激し、嘔吐を引き起こします。黄色や黄緑色の液体を吐くことが多く、朝起きると床に見つけるという飼い主さんも少なくありません。

よくある嘔吐で、比較的心配の少ないタイプです。寝る前に少量のフードを与えるか、1日の食事を細かく分けて、12時間以上空腹にならないようにしましょう。

食事の問題

急なフードの切り替えはよくある原因です。猫の消化器系はいつもの食事に適応しているため、いきなり新しいフードに変えると嘔吐や下痢を起こしやすくなります。切り替えは7〜10日かけて行いましょう。最初は新しいフード25%、これまでのフード75%で混ぜ、2〜3日ごとに比率を変えていきます。

食物過敏やアレルギーも慢性的な嘔吐の原因になります。よく見られるアレルゲンは牛肉、魚、乳製品などの特定のタンパク質です。食べ物が原因と疑われる場合は、しばらく決められたフードだけを与えて、嘔吐が止まるかを確かめることがあります。

異物の誤飲

好奇心旺盛な猫は、ひも、リボン、ヘアゴム、小さなおもちゃの部品、輪ゴムなどを飲み込んでしまうことがあります。特に糸のような細長いものは危険です。腸が送り出そうとするうちにたぐり寄せられて折り重なり、腸閉塞(ちょうへいそく)や腸に穴があく原因になり、命に関わることがあります。

異物誤飲のサインは、繰り返す嘔吐、食事の拒否、元気がない、お腹を痛がるなどです。愛猫が何かを飲み込んだ疑いがある場合は、様子見をせず、すぐに動物病院を受診してください。レントゲンや超音波検査が必要になることが多く、緊急手術になることもあります。

私が勤めている動物病院でも、吐く、ごはんを食べないといった理由で連れて来られる猫はよく見かけます。原因はさまざまで、膵炎(すいえん)のこともあれば、IBD のこともあり、布をかじって飲み込んでしまったような誤飲のこともあります。家の中でかじられた物や、一部が欠けている物に気づいたら、写真を撮って獣医師に見せてください。何を探せばよいかがわかり、診察の助けになります。

消化管の疾患

炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん、IBD)は、猫が長く吐き続ける原因としてよく見られます。腸の炎症が続き、吐いたり吐かなかったりを繰り返しながら、体重が少しずつ減り、食欲も変わります。確定には腸の生検(せいけん)が必要になることが一般的です。

消化管リンパ腫はIBDとよく似た症状を示すことがあり、高齢の猫では珍しくありません。区別には超音波検査と生検が必要です。

ほかの臓器の病気

ほかの臓器の病気でも、猫は吐くことがあります。

疾患注意すべき他の症状
慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)飲水量と尿量の増加、体重減少、食欲低下
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)食欲旺盛なのに体重が減る、落ち着きがなくなる、心拍数の増加
糖尿病(とうにょうびょう)飲水量と尿量の増加、体重減少、食欲の変化
膵炎(すいえん)元気がない、お腹を痛がる、食欲低下
肝臓疾患(かんぞうしっかん)黄疸(おうだん)(耳や歯茎が黄色くなる)、食欲低下、元気がない

これらの疾患は中高齢の猫に多く見られます。7歳を過ぎたら年に1回は健康診断を受け、必要に応じて血液検査もしておくと、吐き始める前に見つかることが多くあります。

中毒

飼い主さんが危険だと思わないものが、猫にとっては致命的になることがあります。ユリ科の植物は花、葉、花粉を含むすべての部位が急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)を引き起こします。アセトアミノフェンやイブプロフェンなど、人間用の痛み止めも猫には非常に危険です。その他の身近な有毒物質としては、一部のアロマオイル、不凍液、タマネギやニンニクなどの食材があります。

中毒による嘔吐は通常突然始まり、よだれ、震え、呼吸困難、虚脱(きょだつ)を伴うことがあります。中毒が疑われる場合は、すぐに夜間救急を含む近くの動物病院を受診してください。

動物病院を受診すべきタイミング

こんなときはすぐに受診を

  • 1日に2〜3回以上嘔吐する
  • 嘔吐が24〜48時間以上続いている
  • 嘔吐物に血が混じっている(鮮血またはコーヒー残渣様)
  • 24時間以上食べない、飲まない
  • 下痢を伴っている(特に血便がある場合)
  • お腹を痛がる様子がある(背中を丸める、触られるのを嫌がる)
  • 元気がなくなった、明らかに行動が変わった
  • 毒物や異物を飲み込んだ疑いがある
  • しばらく吐いたり吐かなかったりが続き、体重も減っている
  • 子猫やシニア猫が吐いている(脱水が進みやすい)

猫は体調不良を隠すのが上手な動物です。嘔吐が増えたり「いつもと違う」と感じたころには、問題がしばらく前から進行していることもあります。

動物病院での検査

獣医師はまず、いつから、どのくらいの頻度で、何を吐いたかを聞き、体を診察します。

そのうえで、血液検査で臓器の働きを調べ、腎臓病や甲状腺機能亢進症などがないかを確認します。尿検査で腎機能と脱水の程度も確認します。

画像検査では、レントゲン撮影で異物や腫瘤(しゅりゅう)、異常なガスの分布がないかを調べます。腹部超音波検査では臓器の構造、腸壁の厚さ、リンパ節をより詳しく確認できます。糞便検査で寄生虫の有無も確認します。

治療法は原因によって異なります。食事の変更だけで済むこともあれば、異物の摘出手術が必要なこともあります。脱水があれば、水分を補う処置も行います。

自宅でできるケア

定期的にブラッシングをしてあげると、飲み込む毛の量が減り、毛玉の頻度も下がります。それでも頻繁に毛玉を吐く場合は、毛玉ケア用のフードやペーストを試してみましょう。

糸、リボン、ヘアゴム、輪ゴムなどは愛猫の手が届かない場所にしまいましょう。ユリなどの有毒植物は家に置かないのが一番安全です。

嘔吐で水分を摂れていないときは脱水が心配です。氷のかけらや、猫用のスープを少し試してみてください。水分補給の工夫については水分補給ガイドも参考になります。

受診の際に役立つのが、嘔吐の記録です。いつ、何を吐いたか、食欲やトイレの変化はあるかを記録しておくと、獣医師が原因を絞り込みやすくなります。Furwiseなら、吐いたときの様子を写真と一緒に記録しておけます。

参考文献

  1. Batchelor, D. J., et al. (2013). Mechanisms, causes, investigation and management of vomiting disorders in cats: a literature review. Journal of Feline Medicine and Surgery, 15(4), 237-265. JFMS
  2. Cornell University College of Veterinary Medicine. (2024). Vomiting. Cornell Feline Health Center
  3. International Society of Feline Medicine. (2024). Vomiting in Cats. iCatCare
  4. Marsilio, S. (2021). Differentiating Inflammatory Bowel Disease from Alimentary Lymphoma in Cats. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 51(1), 93-109.
  5. ASPCA Animal Poison Control Center. (2024). Toxic and Non-Toxic Plants. ASPCA
  6. International Cat Care. Asthma and chronic bronchitis in cats. iCatCare
  7. VCA Animal Hospitals. Coughing in Cats. VCA

執筆 · Furwise 創設者、動物病院アシスタント