朝、素足で床を歩いていたら、湿った細長い塊を踏んでしまった。猫と暮らしていれば、一度は経験があるのではないでしょうか。毛玉は「猫を飼っていれば当たり前」と思われがちで、たまに吐く程度なら実際に心配いりません。ただ、だんだん回数が増えてくるときは、別の原因が隠れていることがよくあります。
猫が毛玉を吐く理由
毛玉は、飲み込んだ毛が胃液や胆汁(たんじゅう)と混ざって固まったものです。「玉」という名前ですが、吐き出されるときは細い食道を通るため、ほとんどが数センチほどの細長い筒状です。胃の中に残り続けると、どんどん大きく、丸く固まっていきます。
猫の舌には後ろ向きのとげがびっしり並んでいて、ひとつひとつが小さな中空のカップになっています。毛づくろいのたびに唾液を被毛(ひもう)の奥まで運び、抜けかけた毛を絡め取って飲み込みます。猫は起きている時間の約 4 分の 1 を毛づくろいに使うため、飲み込む毛の量はかなりのものです。ほとんどは便と一緒に出ていきますが、腸が送り出すより速く毛がたまると、毛玉として吐き出されます。
毛玉を吐くのは正常?
以前は毛玉を吐くのは猫の習性と考えられていましたが、今では頻繁に吐くのは正常ではないと考える獣医師が多くなっています。毛は本来便と一緒に出ていくものなので、よく吐く場合は、炎症性腸疾患(IBD)などで腸の動きが遅くなっているか、皮膚のかゆみで毛づくろいが増えているのかもしれません。両方が重なっていることもあります。
「何回までなら正常」という目安はありません。見た目には健康な短毛種の猫のうち、毛玉を吐くのはおよそ 1 割、長毛種ではおよそ 2 割です。回数を数えるよりも、頻度が増えていないか、体重が減っていないか、ほかに消化器の症状がないかを見てあげましょう。短毛種はもともと飲み込む毛が少ないので、毛玉を吐くならより注意が必要です。
毛玉を吐きやすい猫
長毛種のペルシャ、メインクーン、ラグドールなどは、毛づくろいのたびに飲み込む毛が多く、毛玉で腸が詰まる猫も長毛種がほとんどです。
高齢の猫は子猫よりも丁寧に毛づくろいをするため、飲み込む毛も増えます。10 歳以上の猫で毛玉が詰まった場合は、消化管型リンパ腫が隠れていることが多くなるため、より詳しい検査が必要です。
皮膚のかゆみがある猫、たとえばノミアレルギーの猫は、しきりに毛づくろいをして、普段よりはるかに多くの毛を飲み込みます。
消化器の病気がある猫は、IBD などで腸が毛をうまく送り出せません。
換毛期の春と秋は抜け毛が増えるため、普段はめったに吐かない猫でも、毛玉が増えることがあります。
毛玉を減らすには
いちばん効果があるのはブラッシングと食物繊維で、毛玉除去用のペーストは補助的なものです。頻繁に吐く場合は、原因を探すことも欠かせません。
こまめなブラッシング
飲み込む前に抜け毛を取り除けば、胃に届く毛は減ります。長毛種は毎日、短毛種は週に数回、換毛期はさらに回数を増やしましょう。ブラッシングのしかたは猫の抜け毛ガイドで紹介しています。
食物繊維を多めに
食物繊維は腸の動きを助け、毛が便と一緒に出ていきやすくなります。102 頭の猫を対象にした試験では、高繊維食を食べた猫で毛玉が 21.5%、嘔吐が 21.8% 減りました。サイリウム(オオバコ)やサトウキビ繊維なども、研究で効果が確認されています。
市販の毛玉ケア用フードの多くは、繊維を多めに配合したものです。まずはそこから試してみるとよいでしょう。
毛玉除去用のペースト
毛玉除去用のペーストは主にワセリンでできていて、数十年前から使われています。毛を包んで、消化管を通りやすくする仕組みです。一般的に安全ですが、効果を裏付ける研究は多くありません。ときどき使う程度ならよいですが、いつも頼らなければならないなら原因を探しましょう。
動物病院を受診すべきタイミング
こんなときは動物病院へ
- 何度も吐こうとするのに何も出てこない
- 丸一日以上食欲がない
- 元気がなく、じっとしている
- 便秘、または排便がまったくない
- おなかを痛がる(背中を丸める、抱っこを嫌がる)
- 毛玉を吐く頻度が以前より増えている
- 短毛種の猫が毛玉を頻繁に吐く
上の 5 つは、毛玉が詰まっているサインかもしれません。多くはありませんが、命に関わることがあります。大きくなりすぎた毛玉は小腸を通れず、そこで詰まってしまいます。レントゲンや超音波検査が必要になり、緊急手術になることもあります。
下の 2 つは、毛玉の背景に別の問題がある可能性を示しています。IBD や食物過敏症、皮膚の病気などで、高齢の猫ではより深刻な消化器の病気がないかも調べる必要があります。毛玉以外のものも吐いている場合は、嘔吐ガイドの色の早見表も見てみてください。
毛玉を「咳で出そう」としているように見えるのに、いつも何も出てこない場合は、実は咳をしているのかもしれません。喘息(ぜんそく)などの呼吸器の病気が考えられます。次に起きたときに動画を撮って、獣医師に見せましょう。
よくある質問
猫が毛玉を吐くのは正常ですか? たまに吐く程度なら心配いりませんが、頻繁に吐くのは正常ではありません。飲み込んだ毛は本来便と一緒に出ていくため、よく吐く場合は腸の動きが遅くなっているか、皮膚のかゆみで毛づくろいが増えているのかもしれません。頻度が増えている、体重が減っている、短毛種なのによく吐くといった場合は、原因を調べましょう。
毛玉を減らすには?どんな食事がよいですか? まずはこまめにブラッシングして、飲み込む前に抜け毛を取り除きましょう。次に食物繊維です。市販の毛玉ケア用フードの多くは繊維を多めに配合しており、毛を便と一緒に出しやすくします。毛玉除去用のペーストは、ときどき補助的に使う程度にしましょう。
毛玉で動物病院に行くべきタイミングはいつですか? 何度も吐こうとするのに何も出ない、食欲がない、元気がない、便秘、おなかを痛がるといった様子は、毛玉が詰まっているサインかもしれません。早めに受診しましょう。毛玉を吐く頻度が増えている場合や、短毛種の猫がよく吐く場合も、原因を調べるために受診をおすすめします。
参考文献
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