愛猫が少し退屈そうに見えて、「もう1匹お迎えしようかな」と考える飼い主さんは多いと思います。新しい猫が良い相棒になるか、2匹とも長くストレスを抱えることになるかは、最初の数週間の対面の進め方と、家の環境づくりで大きく変わります。
猫の社会性について
猫はほかの猫と一緒に暮らすこともできますが、それには条件がそろう必要があります。野良猫の群れでは毛づくろいし合ったり、くっついて眠ったりしますが、付き合う相手は自分で選び、合わない相手とは距離を置いています。
室内飼いの猫には、その選択肢がありません。新しい猫を迎えるのは、見知らぬ2匹を同じ家で暮らさせるということです。うまくいくかどうかは、対面の進め方、資源が足りているか、それぞれの猫に自分の居場所があるかにかかっています。
2匹目を迎える前に
以前ほかの猫と暮らしてうまくやっていた先住猫は、何年も1匹で暮らしてきた猫より、新しい同居猫を受け入れやすい傾向があります。すでにストレスのサインが出ている場合は、もう1匹迎えると状況が悪くなることが多いでしょう。
年齢と活動量のバランスも大切です。子猫は一日中遊びたがり、シニア猫は静かに過ごしたいので、この組み合わせはお互いの負担になりがちです。年齢が近い猫同士のほうがなじみやすく、きょうだいの子猫を2匹一緒に迎えるのが、最もスムーズです。
性格の相性は完全には予測できませんが、堂々として自信のある猫は、臆病(おくびょう)で不安の強い猫より新入りを受け入れやすい傾向があります。来客があると隠れる、物音にすぐ驚くといった先住猫の場合、もう1匹迎えるかどうかは慎重に考えたほうがよいでしょう。
対面を始める前に、2匹とも去勢・避妊手術を済ませておきましょう。手術をしていない猫、特にオス猫は縄張り意識が強く、スプレー行動も出やすいため、同居がずっと難しくなります。
「これは愛猫のためか、自分のためか」も一度考えてみてください。仲間がいたほうが幸せな猫もいますが、1匹で満足している猫もたくさんいます。「寂しそう」に見えるのは、飼い主さん自身の気持ちを重ねて見ているだけ、ということもあります。
段階的な対面法
対面を急ぐことが、多頭飼いがうまくいかない最も多い原因です。初対面で喧嘩(けんか)になった猫同士は、その後何か月も衝突が続きやすいため、段階を踏んで対面させることが大切です。
全体で2〜4週間ほどかかるのが一般的ですが、もっと時間が必要な猫もいます。焦って進めると、たいていあとで余計に時間がかかります。
まずは別々の部屋で
新しい猫には専用の部屋を用意し、ドアを閉めておきます。部屋にはトイレ、フード、水、爪(つめ)とぎ、隠れ場所をそろえ、先住猫はこれまで通り家のほかの場所で過ごします。この段階では、お互いの姿が見えないようにしましょう。
別々に過ごすことで、新しい猫は落ち着いて過ごせますし、2匹とも顔を合わせる緊張なしに、においや音で相手の存在に慣れていけます。保護施設から来た猫は特に、怖さが和らぐまで数日かかります。成猫の保護猫を迎えたばかりなら、保護猫のお迎え最初の1か月の過ごし方と並行して進めましょう。
最低でも3〜5日、新しい猫がふつうにフードを食べてトイレを使い、自分から飼い主さんに近づいてくるようになるまで待ちます。まだベッドの下に隠れているようなら、次に進むのは早すぎます。
においの交換
姿を見せる前に、まずにおいで相手を知ってもらいます。靴下や布で一方の猫の頬(においを出す腺がある場所)をなで、もう一方の猫のスペースに置きます。寝床を交換するのもよい方法です。閉じたドアの両側にフードを置き、相手のにおいと食事を結びつけていきます。
相手のにおいにほとんど反応しなくなるまで待ちましょう。どちらかが布に向かって威嚇(いかく)したり、ドアの近くで食べようとしなかったりする場合は、ペースを落としてください。まだ対面の準備ができていません。
仕切り越しの対面
2匹とも相手のにおいがしても落ち着いていられるようになったら、ベビーゲートやペットゲート、少し開けたドア、ケージ越しに姿が見えるようにします。両側にフードを置くのは同じです。
1回数分で十分です。どちらかが固まる、毛を逆立てる、まばたきせずにじっと見つめるといった様子を見せたら、そこで終わりにして、においだけの段階にもう1〜2日戻ります。お互いが見える場所で落ち着いて食べられるなら、良いサインです。
飼い主さん立ち会いの対面
次は仕切りを外し、飼い主さんも部屋にいて、おやつを用意しておきます。近づくかどうかは猫自身に任せ、どちらかを抱き上げて相手の前に連れていくのは避けましょう。
最初は多少威嚇するのは普通で、特に先住猫によく見られます。大切なのは、それが短い抗議で終わるのか、だんだん激しくなるのかです。どちらかが突進する、押さえつける、噛(か)むといった行動を見せたら、クッションや厚手のタオルを間に入れて引き離してください。素手で止めると噛まれる危険があります。そのあとは仕切り越しの段階に戻ります。
最初は5〜10分ほどで十分です。2匹ともリラックスしていられるようなら、少しずつ時間を延ばしていきます。
猫同士だけで過ごす
同じ部屋に長くいても緊張した様子がなくなったら、飼い主さんの留守中も一緒に過ごさせて大丈夫です。新しい猫の部屋は逃げ場として開けておき、一方がもう一方と同じ部屋に閉じ込められるようなドアの閉め方は避けましょう。
見落としやすい対立のサイン
激しい喧嘩(うなり声、一方的な追い回し、噛みつき)には誰でも気づきますが、猫同士の対立の多くは静かに起こり、問題がなさそうに見える家庭でも起きています。
じっと見つめる。 一方の猫が部屋の向こうから、まばたきせずに相手を見つめます。猫にとって、まっすぐ見つめることは威嚇です。いつも同じ猫が見つめ、もう一方が目をそらしているなら、2匹の関係は対等ではありません。
通路をふさぐ。 一方の猫がドアの前や階段、トイレの近くに陣取り、もう一方はどこへ行くにもその前を通らなければなりません。飼い主さんには「座っているだけ」に見えても、ふさがれている猫にとっては関所のようなものです。
資源の独占。 一方がいつも先に食べ、もう一方は待っている。一方が高い場所をすべて占領している。トイレを使うわけでもないのに、そのそばで寝そべっている。
回避。 最も気づきにくいサインです。一方の猫が特定の部屋に入らなくなる、相手が寝ているときにしか食べない、一日のほとんどを同じ場所で過ごす。目立つ行動ではないので見過ごされがちですが、その猫が過ごせる場所はどんどん狭くなっています。相性の悪い猫同士は、同じ場所を時間をずらして使うようにもなります。「2匹で折り合いをつけた」ように見えても、実際はお互いを避けているのです。
一度も毛づくろいし合わず、くっついて眠ることもなく、いつも距離を保っているなら、仲良しというより、争わずにいるだけかもしれません。その状態がしばらく続くこともありますが、家の環境が変わると崩れることがあります。
空間の管理
トイレ。 猫の数+1個を、別々の場所に置くのが基本です。2つ並べても猫にとっては1つです。相手の縄張りを通らないとたどり着けないトイレは、その猫にとって使えないのと同じです。トイレの問題は多頭飼いで特に多いストレス関連の問題のひとつで、たいていは置き場所を見直すと改善します。叱っても解決しません。
フードと水。 それぞれの猫に専用の器を用意し、別々の部屋か、少なくとも部屋の別々の隅に置きます。仲の良い猫同士なら並んで食べても大丈夫ですが、そうでなければ一方は緊張しながら食べ、もう一方は順番を待つことになります。
私が勤めている動物病院でも、多頭飼いのご家庭で食べ物の取り合いに困っているケースをときどき見かけます。特に1匹が療法食を食べなければならないときは、結局ごはんを別々にするしかないことが多いです。
高さのある空間。 床が足りなければ、上に広げましょう。キャットタワーや壁付けの棚、物を置いていない家具の上を使えば、同じ広さでも猫同士が距離を取って暮らせます。高い場所にいる猫は周りを見渡せて、追い詰められることもないので安心できます。
安全な逃げ場。 それぞれの猫に、もう一方が追ってこない場所を最低ひとつ用意しましょう。屋根付きのベッド、クローゼット、猫用の小さな出入り口がある部屋などです。衝突が起きたとき、負けた側の猫には逃げ込める場所が必要です。
爪とぎ。 何か所かに置きます。爪とぎはにおいをつける行動でもあり、自分のスペースで爪とぎができない猫は、そこを自分の場所だと感じにくくなります。
スポットタイプの駆虫薬をつけたあと。 病院でもよくあるのが、首の後ろに駆虫薬をつけた2匹がお互いをなめ合い、苦い薬をなめてしまって、2匹とも口から泡を吹いてしまうケースです。薬をつけたら乾くまで猫同士を離しておきましょう。泡がなかなか止まらない、元気がないといった場合は、獣医師に電話で相談してください。
うまくいっていないとき
次のようなサインがあれば、対面の進め方や暮らしの環境に問題があると考えられます。
- 一方の猫がフードを食べなくなった、または明らかに量が減った。多頭飼いで体重が減っているなら、まずほかの猫にフードを取られていないか確かめましょう
- 家のほかの場所に行けるのに、一方の猫が1週間以上同じ部屋から出てこない
- どちらかの猫に過剰な毛づくろいや脱毛が見られる
- 壁や家具に尿をかける(尿スプレー)。トイレの失敗とは違い縄張りの主張で、多頭飼いでは自分の縄張りが脅かされていると感じているサインです
- 人への八つ当たり攻撃。相手の猫に向かえない猫が、近くにいる人にいらだちをぶつけることがあります
段階的な対面を続けても、6〜8週間たってこうしたサインが続いているなら、2匹の相性が合わないのかもしれません。飼い主さんのせいではありません。ほかの猫との同居に向かない猫は実際にいて、無理に続けると猫にも飼い主さんにもつらくなります。
行動診療を専門とする獣医師(日本ではまだ少ないものの、行動診療科を設ける動物病院も増えてきています)なら、飼い主さんが気づかなかった方法を見つけられることがあります。まだ試していない環境の工夫や、やり方を変えた再対面などです。それでも別々に暮らすほうが良い場合もあり、家の中で生活空間を完全に分けるか、一方を1匹飼いの家庭に譲ることも選択肢になります。
動物病院を受診すべきタイミング:どちらかの猫が24時間以上フードを食べない、尿に血が混じる、排尿時にいきんでいる(ストレスに関連した膀胱炎(ぼうこうえん)の可能性があり、オス猫では数時間で緊急事態になることがあります)、一方がもう一方にけがをさせている場合は、すみやかに受診してください。
よくある質問
猫同士の対面にはどのくらいの期間が必要ですか? 通常2〜4週間ほどで、もっと時間がかかる猫もいます。別々の部屋で過ごす、においを交換する、仕切り越しに顔を合わせる、飼い主さん立ち会いで対面する、という順に進め、最後に猫同士だけで過ごせるようにします。
猫2匹にトイレはいくつ必要ですか? 猫の数+1個が目安なので、2匹なら3個です。2つ並べても猫にとっては1つなので、別々の場所に置きましょう。どちらの猫も、相手の縄張りを通らずにトイレへ行ける配置にすることも大切です。
猫同士がじゃれているのか喧嘩しているのか、どう見分けますか? 遊びはたいてい静かで、交互に追いかけ合い、どちらも自分から戻ってきて、終わったあとはリラックスしています。喧嘩では威嚇やうなり声が出て、一方が相手を押さえつけたり、逃げる相手をしつこく追い回したりし、毛が逆立ちます。喧嘩のあとは、一方または両方が隠れたり相手を避けたりします。じっと見つめる、通路をふさぐ、フードや休む場所を独占するといった、音のない対立にも注意してください。
何か月も一緒に暮らしているのに猫同士が仲良くなりません。どうすればよいですか? まず、それぞれの猫に自分用のトイレ、食事の場所、隠れ場所、高い場所が十分にあるか確認しましょう。段階的な対面を最初からやり直すと改善することもあります。どうしても相性が合わない猫もいて、家の中で生活空間を分けるか、一方を1匹飼いの家庭に譲るほうが、2匹にとって良いこともあります。
参考文献
- Crowell-Davis, S. L., Curtis, T. M., & Knowles, R. J. (2004). Social organization in the cat: A modern understanding. Journal of Feline Medicine and Surgery, 6(1), 19-28.
- Levine, E., Perry, P., Scarlett, J., & Houpt, K. A. (2005). Intercat aggression in households following the introduction of a new cat. Applied Animal Behaviour Science, 90(3-4), 325-336.
- Ellis, S. L. H., Rodan, I., Carney, H. C., Heath, S., Rochlitz, I., Shearburn, L. D., Sundahl, E., & Westropp, J. L. (2013). AAFP and ISFM feline environmental needs guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery, 15(3), 219-230.
- Bernstein, P. L., & Strack, M. (1996). A game of cat and house: Spatial patterns and behavior of 14 domestic cats (Felis catus) in the home. Anthrozoös, 9(1), 25-39.
- Bradshaw, J. W. S. (2016). Sociality in cats: A comparative review. Journal of Veterinary Behavior, 11, 113-124.
- DePorter, T. L., Bledsoe, D. L., Beck, A., & Ollivier, E. (2019). Evaluation of the efficacy of an appeasing pheromone diffuser product vs placebo for management of feline aggression in multi-cat households: a pilot study. Journal of Feline Medicine and Surgery, 21(10), 967-977.
- Cornell University College of Veterinary Medicine. Feline Behavior Problems. Cornell Feline Health Center