子猫のお迎え|最初の1か月の社会化と接し方

子猫のお迎え|最初の1か月の社会化と接し方

子猫を迎えた最初の1か月は、想像していたよりもずっと忙しい時期かもしれません。保護成猫を迎えるときの「静かに、邪魔をせずに待つ」という接し方は、子猫にはあまり当てはまりません。子猫はとにかく動き回り、好奇心のままに家中を探検し、危ないものを口に入れようとします。お迎えしたその日から、目を離した隙にソファの背から落ちそうになっていたり、リクライニングチェアの下に潜り込んで出てこられなくなったり、ヘアゴムを飲み込もうとしていたりと、ひやりとする場面が続くかもしれません。この時期にいちばん大切なのは、子猫について回りながら安全を守ってあげることと、この貴重な数週間を大切に過ごしてあげることです。子猫が家のドアをくぐる瞬間には、もう「社会化期」と呼ばれる発達期間が、半分以上進んでしまっているからです。

子猫は「小さな大人猫」ではありません

はじめて子猫を迎える方の多くが、「大人猫の小さい版だから、必要なものを少しだけ用意すればよい」と考えがちです。でも、この前提が後々のたくさんの失敗のもとになります。

8〜16週の子猫は、社会化、遊び方、「この世界で何が当たり前か」を学ぶうえで、一生に一度しかない発達期の真っ最中にいます。これからの4週間で飼い主さんがしてあげること、あるいはしてあげられなかったことが、3歳のころの愛猫の性格を大きく左右し、その後で取り戻すのはなかなか難しいのです。

この記事は、その時期について書かれています。前提として、迎えるのは8〜16週の子猫を想定しています。8週未満の場合、本来はまだ母猫から離してはいけない時期で、ミルクでの授乳、保温、つきっきりのケアといった別のスキルが必要になります。この記事だけでは足りません。逆に16週を超えている場合、ここに書いてあることの多くはまだ役に立ちますが、時間的なプレッシャーはかなり小さくなり、保護猫のお迎え記事のほうがより参考になるはずです。

お迎え前にしておきたいこと

お迎えの時期

子猫を何週で迎えるかは、その子が母猫と一緒に育ったかどうかによって大きく変わります。

母猫と一緒に育っている場合は、できるだけ遅く迎えるのが理想です。 ブリーダーで生まれた子、保護施設で母猫と一緒に保護されている子、TNR活動で一緒に保護された子など、母猫ときょうだいがそばにいる子猫は、できるだけ長く一緒にいさせてあげましょう。2017年に5,726匹の猫を対象に行われた調査では、8週より前に母猫から離された子猫は、成猫になったあとに攻撃的な行動や常同行動(じょうどうこうどう/過剰な毛づくろいなど、同じ動作を意味なくくり返してしまう行動)を示す割合が明らかに高かったことが報告されています。一方で、行動上の問題がもっとも少なかったのは、14〜15週で迎え入れられたグループでした (Ahola, Vapalahti, & Lohi, 2017)。12週がひとつの目安となるラインで、14週ならさらに安心です。

母猫がいない孤児の子猫の場合は、事情が違います。 親に置いていかれた子猫、TNR活動で見つかった孤児、母猫が行方不明になったり亡くなってしまった子など、保護施設の子猫の多くは、最初から母猫がいません。こうした孤児の子に、「12週まで待つ」というルールはあてはまりません。孤児を保護施設のケージにそのまま12週まで置いておくと、人間とのふれあいの貴重な時間を奪うことになり、社会化にとってはかえってマイナスになります。孤児の子の場合に注目したいのは、年齢ではなく次の2つです。2〜9週の社会化期にきちんと人間に触ってもらえていたか、そしてお迎え時点で体調が整っているか(自分でドライフードを食べられる、体重が安定している、最初のワクチンが済んでいる)。多くの保護施設では、孤児の子猫は8週前後で譲渡が始まりますが、孤児の場合はこのタイミングにきちんと理由があります。

どちらの場合でも、お迎え前にフォスター(一時預かり)の方やブリーダーに、いくつか具体的なことを聞いておくと参考になります。いろいろな人が触ってあげていますか?掃除機の音やインターホンなど、家の中の音にすでに慣れていますか?普段から抱っこしたり、肉球を触ったり、口の中を見せたりする練習をしていますか?こうした答えのほうが、「何週目か」よりも、その子猫がどれくらい社会化されているかをはっきりと教えてくれます。同じ8週でも、ていねいに人と接してきた孤児の子のほうが、保護施設のケージで12週まで人にあまり触られずに過ごした子よりも、人間によく慣れていることがあります。

用意しておきたいもの

ペットショップで一通り買いそろえる必要はありませんが、子猫には大人猫とは違う、いくつか具体的に必要なものがあります。

用品なぜ子猫に必要か
子猫用フード(保護施設やブリーダーと同じブランド)子猫はカロリー密度の高いフードを必要とします。お迎え初日にフードを変えるのは避け、たとえ気に入っているブランドがあっても、まずは元のフードを続けましょう。
入口が低くて浅いトイレ大人猫サイズのトイレは、小さな子猫には縁が高すぎて入れないことがよくあります。
保護施設と同じ猫砂初日に猫砂まで変えるのは、不慣れな要素を一つ増やしてしまうだけです。
浅くて広めの水の器子猫は狭くて深い器を嫌がり、水を飲む量が減ってしまうことがあります。
爪とぎ(横置きタイプも含めて複数)子猫は「どこで爪を研いでいいか」を学んでいる時期で、最初の1か月で習慣が決まります。
猫じゃらしや羽根のおもちゃ(種類を2つ以上)飼い主さんと一緒に遊ぶ時間は「あったらいいもの」ではありません。後ほどくわしく説明します。
ドアの取り外しができるキャリーケース初日からお部屋に置いて寝床として使うと、「キャリー=動物病院」という負の連想を避けられます。
爪切り子猫の爪は伸びるのが早く、肉球や手足を触られることに早めに慣らしてあげましょう。
体重計体重を追跡するために、キッチンで使う小さなデジタルスケールで十分です。

子猫向けの安全チェック

子猫の安全対策は、大人猫向けのチェックとは別物だと考えてください。大人猫はだいたい何ができて、何をしてはいけないかを知っていますが、子猫は知りません。お迎え前に、家の中を一度ゆっくり歩いて、次のような場所を確認しておきましょう。

  • ひも状のもの。毛糸、ヘアゴム、リボン、デンタルフロス、クリスマスツリーの飾り、裁縫用の糸など。猫がひもを飲み込むと、片方の端が消化管のどこかに引っかかり、もう片方が腸の動きで先に進もうとして、腸壁を傷つけてしまうことがあります。「線状異物(せんじょういぶつ)」と呼ばれる重い外科的な緊急事態で、犬と比べて猫に多く見られます。すべて手の届かない場所にしまい、ソファの下も一度確認してください。
  • リクライニングチェア。子猫は機構の中に潜り込んでしまうことがあり、誰かが座ったり背もたれを倒したりするときに挟まれて、最悪の場合は命にかかわります。家にリクライニングチェアがある場合は、操作する前に子猫がどこにいるかを必ず確認するルールを、ご家族みんなで決めておきましょう。
  • トイレのフタ。子猫が落ちると自力で出られないことがあります。最初の数週間は、トイレのフタは閉めたままにしておきましょう。
  • 窓のブラインドのコードのループ。首が引っかかって締まってしまう事故が起きることがあります。ループを切るか、手の届かない高さにまとめておきましょう。
  • 洗濯機・乾燥機。常にドアを閉めて、運転前にもう一度中を確認するクセをつけましょう。
  • ベランダのすき間。子猫は思っている以上に小さなすき間を通り抜けてしまいます。
  • 小さくて飲み込めるもの。コイン、ビーズ、ピアスのキャッチ、小さなレゴ、輪ゴムなど。
  • 有毒な植物や食品。とくにユリは強い毒性があり、花粉を少しなめただけでも急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)を起こすことがあります。「高い場所に置く」ではなく、家の中から完全に出してしまうのがおすすめです。
  • 洗剤・洗浄剤。シンクの下ではなく、ドアが閉まる収納の中にしまいましょう。
  • 垂れ下がっているコード類。ブラインドのコード、ランプ、家電のコードを、子猫はかじってしまうことがあります。

このリストは長く感じるかもしれませんが、ほとんどは「実際に何かが起きるまで気づかない」ものです。何かが起きてからやり直すよりも、お迎え前に一度しっかり確認しておく方がはるかに楽です。

動物病院の受診予約

お迎えから1〜2週以内に、初回の健康診断を予約しておきましょう。一般的な触診、寄生虫の便検査、ワクチンスケジュールの相談(このあとくわしく取り上げます)が含まれます。ブリーダーや保護施設からもらった医療記録は、すべて持参してください。

初日と最初の夜

多くの子猫は、長く隠れていることはありません。最初の1時間からキャリーの中をのぞき、部屋を見回したと思ったら飼い主さんの膝に乗ってくる子もいれば、家具の下に半日ほど隠れて「もう出てきても大丈夫」と判断するまで時間がかかる子もいます。どちらも普通の反応です。

初日は、まず小さな部屋を「ベース」として用意しましょう。これは保護成猫のように落ち着く時間が必要だからではなく、初日からいきなり家全体に放してしまうと、目を離した瞬間に子猫がどこに行ったかわからなくなってしまうからです。空き寝室や書斎など、ドアを閉められる場所であれば十分です。フード、水、トイレ、爪とぎ、おもちゃをいくつか部屋に置き、飼い主さんは床に座って、子猫が自分から出てきて飼い主さんを「探検」してくれるのを待ちましょう。

その小さな部屋で愛猫が落ち着いた様子を見せたら、たいていは数時間以内、長くても翌朝くらいに、徐々に部屋の外に出してあげても大丈夫です。はじめて家の他の場所に連れて行くときは、何もせずに、ずっと愛猫の後をついて歩いてください。この時間で、お迎え前のチェックで見落としていた危険にきっと気づきます。

最初の夜は、多くの子猫が鳴きます。母猫、きょうだい、慣れていたにおい、これまで知っていたものすべてを失ったばかりだからです。別の部屋に閉じ込めて自分で乗り越えさせる飼い主さんもいれば、すぐ近くで一緒に寝かせる飼い主さんもいます。これに正解はありません。元の家やブリーダーから持ち帰った敷物(洗わずに)をそばに置いてあげて、静かで照明を少し落とした部屋で過ごせれば、ほとんどの子猫は数日のうちに落ち着いていきます。落ち着いたあとも、子猫は1日18〜20時間ほど眠り、ときおり夜中に走り回るのも正常な行動です。こうしたリズムへの対応は愛猫の睡眠ガイドで解説しています。

社会化期:この章がいちばん大切

猫には社会化のための「敏感期」と呼ばれる時期があります。これは「ある日突然閉じる」というよりも、徐々に閉じていく期間で、おおまかには次のように進みます。

2〜3週

敏感期がはじまり、子猫が「この世界で何が当たり前か」を学びはじめます。

9〜10週

社会化期が後半に入り、新しい経験を「普通」として受け入れにくくなってきます。

14週ごろ

社会化期がおおむね終わり、その後に「これは大丈夫」という新しい関連付けを作るのは、かなり難しくなります。

この期間、子猫は「何が普通か」を学んでいます。どんな人、音、動物、環境、経験が「安全な世界の一部」なのかを判断していく時期です。社会化期の後半に入ると、中立的な反応や前向きな関連付けを作るのが難しくなり、恐怖の反応はより根深くなっていきます。この時期に人と十分にふれあわずに育った成猫は、その後何年もかけても、本当の意味で人間に慣れることが難しくなります。

ここがちょっとつらい話ですが、12週の子猫を迎える時点で、社会化期はすでに後半に入っています。残されている時間はそれほど長くありません。これからの4〜6週間は「時間があったらやる」程度のことではなく、これから15年一緒に暮らすことになる愛猫の「下地」をつくる時期です。

「社会化」とは、つきつめれば、大人になってから出会うことになる物事を、怖くない状態でやさしく経験させてあげることです。トレーニングや指示をするわけではありません。大切なのは、その瞬間に愛猫が「安心している」ということだけです。次のようなものに、できるだけたくさん触れさせてあげましょう。

いろいろな人。年齢、声、においの違う人々です。ご家族や友人を一人か二人ずつ家に呼んで(パーティではなく)、床に座っておやつを差し出してもらいましょう。愛猫が隠れたければ隠れさせてあげてください。目標はお客さん全員に懐いてもらうことではなく、「知らない人」という存在そのものが「怖いもの」として記憶されないようにしてあげることです。

身体への接触。やさしく抱っこしてあげる。肉球を触る。口を開けて歯をのぞく。やわらかいブラシで何度かなでる。爪を1本だけ切ってからおやつをあげる。キャリーに5分ほど入れて、その中でごはんを食べさせる。これらは「特別なトレーニング」ではなく、これから15年間、数か月に一度はする必要がある日常的なケアです。今のうちに慣れておけば、将来は何でもないことになります。逆に今練習しなければ、毎回が「戦い」になってしまいます。

生活の音。掃除機、インターホン、ミキサー、料理のにおい、テレビの音。最初から掃除機を子猫に向けて突進させるのは避けましょう。まずは離れた場所から、小さな音量で聞かせ、横におやつを置いて、徐々に距離を縮めていきます。

キャリーと車。短くて、ストレスの少ないドライブをしてみましょう。行き先はどこでも構いません。家に戻ったらおやつを少し、来週もまた同じことをくり返します。「キャリー=必ず動物病院に行く」とは限らないと小さい頃から知っている猫と、毎回キャリーが恐怖体験になっている猫とでは、これから10年以上の付き合い方の難易度がまったく違ってきます。

他の動物。すでに犬や先住猫がいる場合は、多頭飼いの段階的な対面法に沿って進めてください。子猫は大人猫より早く順応しやすいですが、それでも段階を省略してはいけません。

これらすべての裏付けとして、もっとも明確な研究は、2008年にイギリスの保護施設で行われたものです。子猫の一部のグループに、2〜9週のあいだに追加で人がなでたり抱っこしたりする時間を設けて、1年後に追跡したところ、そのグループは人間に対する恐怖がはっきりと低く、飼い主さんとの絆もしっかりしていたという結果でした。サンプルサイズは大きくはありませんが、結果は明確で、これまでのほかの知見ともよく一致しています。

ただ、頑張りすぎて愛猫を疲れさせてしまうのは逆効果です。質は量よりも大切です。社会化期に1回でも本当に怖い体験をしてしまった子猫は、そのできごとに対して長く尾を引く恐怖を持ってしまうことがあります。基本ルールはシンプルで、低強度・頻繁に・必ず食事や遊びとセットで・常に逃げ道があること。圧倒されそうなときは、愛猫が「やめておく」ことを選べるようにしてあげましょう。

食事と成長

子猫は栄養面でも、大人猫の小型版ではありません。体重1kgあたりに必要なエネルギー量、たんぱく質、脂肪のすべてが大人猫より明らかに高く、そしてその差は子猫が小さければ小さいほど大きくなります。獣医学では一般に、生まれてから1歳までが子猫期とされ、最初の1年間は子猫用フードを続けるのがおすすめです。「カロリーを減らしてあげよう」と早めに大人猫用に切り替えるのは避けましょう。お腹がすくだけでなく、体が小さくなったり、健康面で弱くなったりすることがあります。

少量を頻繁に与えるのが基本です。とても小さな子猫であれば1日3〜4回、1歳に近づいてきたら1日2回に減らしていきます。常にドライフードを置いておく「自由給餌」も子猫によってはOKですが、体重の変化を追いにくくなります。具体的な給餌量の計算や、1歳頃に成猫用フードへ切り替えるタイミングについては、愛猫の食事ガイドで解説しています。

愛猫の成長を観察してあげましょう。体重を毎日量る必要はありませんが、週に1回キッチン用のはかりで量って記録しておくと、何か問題があるときに早く気づけます。インターネットでは「週に100グラム」という数字をよく見かけますが、これには信頼できる査読論文の根拠はありません。本当に参考になるのは、獣医師さんが愛猫を成長曲線にプロットして比較してくれた結果です。見てほしいサインは「ゆるやかに右肩上がりの線」です。線が平らになったり下がったりしてくるときは、動物病院に相談する目安です。

ここで、よくある誤解を一つ訂正しておきたいと思います。8〜16週の健康な子猫であれば、一晩の絶食には十分に耐えられます。実際、この年齢層の子猫75匹を、避妊手術や去勢手術の前の一晩絶食について追跡した研究では、低血糖を起こした子は1匹もいませんでした。「子猫は絶対に絶食してはいけない」というルールは、肝臓のグリコーゲン貯蔵がまだ十分にできていない、6〜8週未満のごく小さな子猫にあてはまるもので、その月齢では確かに数時間ごとの授乳が必要です。すでにお迎えできる年齢の子猫の場合、心配なのは「たまに1食抜くこと」ではなく、「何食も連続して食べないこと」です。何食も連続で拒食しているときは、動物病院に連絡すべきサインです。

ワクチンとはじめての健診

これからの数か月で、愛猫は一連のワクチンを受けることになります。6〜8週ごろから始めて、数週間ごとに繰り返し、16週を過ぎるまで続けます。なぜ何度も接種する必要があるかというと、1回では効かないからではなく、母猫から受け継いだ移行抗体(いこうこうたい)が、初期のワクチンの効果をブロックしてしまうことがあるからです。そして、移行抗体が消えるタイミングは子猫によって少しずつ違うため、16週以降まで継続して接種することで、「少なくとも1回はちゃんと効いた」と確認できるようになっています。

くわしいスケジュール、それぞれのワクチンが何を予防するか、日本の予防接種にまつわる話題は、すべて猫のワクチンガイドにまとめてあります。初回の動物病院受診の前に一度読んでおくと、何を獣医師さんに相談すればよいか、これからの数か月で何回くらい通院することになるかが見えてきます。

初回の受診では、ワクチンの相談に加えて、便検査と寄生虫予防についても確認されます。優良な保護施設から来た子猫であっても、お腹に寄生虫を持って帰ってくることはよくあるので、驚かないでください。去勢手術や避妊手術についても、たいていこのタイミングで相談がはじまります。多くの動物病院では5〜6か月ごろをひとつの目安にしていますが、最終的なタイミングは獣医師さんと相談しながら決めていきます。

遊び方とかみ癖

子猫はとにかく激しく遊びます。きょうだいげんかのような取っ組み合い、追いかけっこ、飛びかかり、噛みつき。これらはすべて正常な猫の遊びで、ほとんどは本能として残っている狩りの動作を練習しているだけです。飼い主さんがしてあげるべきなのは、どこに線を引くべきかを教えてあげることです。

もっとも大切なルール:手や足をおもちゃの代わりにしないこと。10週の子猫にとって、布団の下で動く指は楽しい遊び相手かもしれません。でも、それが5kgの大人猫になると、足首を待ち伏せて噛みついてくる原因になってしまい、その癖は本当に直しにくいものです。猫じゃらし、投げるおもちゃ、長い棒など、愛猫の歯と飼い主さんの肌のあいだに距離が取れるものを使いましょう。遊んでいる途中で愛猫が手に噛みついたら、その時点で遊びは即終了です。立ち上がってその場を離れて、それで終わり。何度かくり返すうちに、愛猫はちゃんと理解してくれます。

1日2回・10分ずつくらいが、子猫にはちょうどよい遊びの頻度です。良い猫じゃらしを使えば、これで十分です。大事なのは長い時間遊ぶことではなく、その途中で**実際に何度か「捕まえさせてあげる」**ことです。ずっと見えるのに捕まえられないと、捕食動物である猫は本当にストレスを感じてしまいます。

レーザーポインターについて、ひとことだけ。2021年に600人以上の飼い主さんを対象にした調査では、レーザーポインターでの遊びを頻繁にしている猫は、光や影を凝視したり、特定のおもちゃに執着したりする「異常な反復行動」を示しやすい傾向があったと報告されています。これは相関を示した研究で因果関係を示すものではありませんが、簡単な対処法があります。レーザーポインターでの遊びは、必ず最後に光が消えた場所におやつや実体のあるおもちゃを置いて、愛猫が「捕まえられる」ものを残してあげるのです。この使い方なら、たまに使うぶんには問題ありません。逆に、もしレーザーポインターが愛猫との唯一のふれあい遊びになっているのなら、それは見直しが必要です。

1匹で迎えるか、2匹で迎えるか

先に結論を言ってしまうと、子猫は2匹で迎えるほうが、1匹で迎えるよりも多くの場合は楽になります。子猫同士で遊んでお互いに体力を消費し、飼い主さんが家にいないあいだもお互いの社会的な欲求を満たし合ってくれるからです。これは、たとえ熱心な飼い主さんでも一人で全部カバーするのは難しい部分です。住居やご予算に余裕があるのなら、きょうだい猫を2匹一緒に迎えるのは、猫との暮らしをぐっと楽にしてくれる選択のひとつです。

ただ、よく耳にする「シングル子猫症候群(Single Kitten Syndrome)」という呼び方について、補足しておきたいことがあります。この言葉は保護団体のパンフレットなどでよく見かけますが、獣医学的にきちんと検証された臨床診断ではなく、「ペアで迎える」と「1匹で迎える」のどちらが本当に良いかを直接比較した研究も、いまのところありません。あるのは、何十年にわたる保護団体や動物行動学者の現場での観察です。忙しいご家庭で1匹だけで育った子猫は、遊ぶ機会が少なく、他の猫とふれあう機会も少ないと、注意を求めるための行動や、過剰な飼い主さんへの依存を示すことがあります。これは現場で実際に観察されている現象ですが、必ず起きるとは限りませんし、臨床的な診断名でもありません。

ですから、2匹迎えられるなら2匹がおすすめです。1匹だけになる場合も心配いりませんが、その分、飼い主さんが多めに時間をかけてあげる必要があると考えておきましょう。1匹だけの子猫には、より多くの一緒に遊ぶ時間、より多くのスキンシップ、そして来客にも少しずつ慣れる機会を意識して作ってあげましょう。他の猫とのふれあいについては、健康でワクチン接種が完了している、完全室内飼いの成猫(たとえば、すでに猫を飼っているお友達のお家の子)となら、社会化期のうちに交流の機会を作ってあげられると理想的です。感染症予防の観点から、多頭飼いの管理が分からない場所や、外に出る猫との接触は避けましょう。静かなお部屋で、日中ほとんど家にいない飼い主さんと、1匹だけで過ごす子猫というのは、子猫を迎える環境としてはいちばん難しいパターンです。

すでに大人猫を飼っているご家庭の場合、おもしろいことに、新しい子猫は2匹のほうが1匹よりも、先住猫にとっては受け入れやすいことが多いです。子猫同士でお互いに遊んでくれるおかげで、先住猫に遊びを求めて執拗に近づくことが減るからです。先住猫がもっとも嫌うのは、まさに「新入りに付きまとわれること」です。

受診の目安

子猫を見ていると驚かされる行動が多いものですが、ほとんどは正常な範囲です。激しく遊んだあとに突然倒れるように寝てしまう、しゃっくり、フードを切り替えたときの一時的なゆるい便などは、よく見られるものです。ときどき少量だけ吐くことも、健康な子猫でも起きることがありますが、くり返し起こる嘔吐や続く嘔吐はそうではありません。

その日のうちに動物病院に連絡したい状況は、次のとおりです。

  • 短い休憩を超えるぐったり感。子猫がおもちゃにまったく反応しない場合は、普通ではありません。
  • 2食以上連続して食べていない
  • 下痢が続いている。とくに血が混じっている、お腹が張っているときは要注意です。子猫の寄生虫はとても多く、治療できるものですが、診断が必要です。
  • 嘔吐をくり返している
  • 呼吸が苦しそう
  • お腹が腫れている、硬い、触ると痛がる
  • 1時間以上続く跛行(はこう/足を引きずる状態)
  • 口やお尻からひもや糸が出ている絶対に引っ張らないでください。線状異物の緊急事態です。すぐに動物病院に連絡してください。

1か月を過ぎたら

最初の1か月はもっとも集中して向き合う時期ですが、それで終わりではありません。1か月が過ぎるころには、愛猫はひたすら動き回る小さな毛玉のような姿から、少しずつ落ち着いた「猫らしい」姿に変わっていきます。社会化期は14週ごろまでゆっくり終わりに向かっていくので、「日常の刺激に慣れさせる」という作業は4週でおしまいではなく、ここから少しずつペースを落としていくイメージです。

これからも続けていきたいことを、いくつか挙げます。週に1回は、キャリーに入れて中でごはんを食べさせるか、動物病院ではない短いドライブに連れて行きましょう。これだけで「キャリー=動物病院」という固定観念を防げます。爪切り、ブラッシング、歯のチェック、耳をやさしく触る練習。それぞれ長い時間をかける必要はなく、数秒触る、おやつをあげる、それで終わりです。1日2回の遊びの時間も、最初の1か月を過ぎたら止めてしまうのではなく、続けてあげてください。「飼い主さんは毎日決まった時間に猫じゃらしを出してくれる」と知っている子猫は、いたずらのために遊びを探しに行くことが少なくなります。

子猫の1か月は、別のタイプの「お仕事」

子猫を迎えた最初の1か月は、保護成猫を迎えた最初の1か月とはまったく違うタイプの「お仕事」です。保護成猫を迎えるときは、静かに距離を取って、見守りながら待つことが大切でした。子猫の場合は、その子について行きながら世界を見せてあげること、そしてまだ自分の体をうまくコントロールできない時期に、安全を見守ってあげることが大切になります。前者は忍耐力が、後者は体力と注意力が試される時期です。でも、飼い主さんが今この数週間にかけてあげる時間は、3歳になったときの愛猫の性格を、本当に大きく決めてくれます。

数週間が過ぎるころには、嬉しくなる小さな変化が少しずつ増えていきます。フードの袋の音を聞いてキッチンに走ってくる。爪切りのときに抵抗しなくなる。お客さんが来たときに逃げずに歩いていく。夜になると自分から飼い主さんのベッドにやってくる。これらはどれも偶然ではなく、最初の数週間、飼い主さんが手間をかけてあげたことが、そのまま形になって返ってきた結果です。

参考文献

  1. Quimby, J., Gowland, S., Carney, H. C., DePorter, T., Plummer, P., & Westropp, J. (2021). 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery, 23(3), 211–233. PMC
  2. Stone, A. E. S., Brummet, G. O., Carozza, E. M., Kass, P. H., Petersen, E. P., Sykes, J., & Westman, M. E. (2020). 2020 AAHA/AAFP Feline Vaccination Guidelines. Journal of Feline Medicine and Surgery, 22(9), 813–830. PMC
  3. Ahola, M. K., Vapalahti, K., & Lohi, H. (2017). Early weaning increases aggression and stereotypic behaviour in cats. Scientific Reports, 7, 10412. PMC
  4. Casey, R. A., & Bradshaw, J. W. S. (2008). The effects of additional socialisation for kittens in a rescue centre on their behaviour and suitability as a pet. Applied Animal Behaviour Science, 114(1–2), 196–205.
  5. Kogan, L. R., & Grigg, E. K. (2021). Laser light pointers for use in companion cat play: Association with guardian-reported abnormal repetitive behaviors. Animals, 11(8), 2178. PMC
  6. Hofmeister, E. H., Brainard, B. M., Egger, C. M., & Kang, S. (2009). Perioperative blood glucose concentrations in kittens following overnight fasting and gonadectomy. Journal of Feline Medicine and Surgery. PMC
  7. MSD Veterinary Manual. Gastrointestinal Obstruction in Small Animals. merckvetmanual.com
  8. Cornell University College of Veterinary Medicine. Choosing and Caring for Your New Cat. Cornell Feline Health Center