便の形や色の変化は、他の症状よりも先に表れることがよくあります。トイレ掃除のついでに少し目を向けるだけで、小さな不調のうちに気づけます。
ブリストル便性状スケール
ブリストル便性状スケール(Bristol Stool Scale)はもともと人間用の指標ですが、猫の便にもそのまま使えます。獣医師に「先週より柔らかい」と伝えるより、「4 から 6 になった」と伝えるほうが正確です。

猫の便に当てはめたブリストル便性状スケール
出典を明記すれば自由に使えます · CC BY 4.0
| スコア | 形状 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | 小石のような硬い塊 | ひどい便秘 |
| 2 | ごつごつしたソーセージ状 | 軽い 便秘 |
| 3 | 表面にひびのあるソーセージ状 | 正常範囲、やや固め |
| 4 | 表面がなめらかなソーセージ/棒状 | 理想的 |
| 5 | 縁がはっきりした柔らかい塊 | 正常範囲、やや柔らかめ |
| 6 | どろっとした塊 | 軽い下痢 |
| 7 | 水っぽく形がない | 下痢 |
健康な猫の多くは、スコア 3〜4 です。食欲も元気も普段通りなら、スコア 5 でも慌てる必要はありません。
色からわかること
正常な便は茶色です。黒色・赤色・灰白色になったときは注意して見ましょう。

便の色が示す可能性のあるサイン
出典を明記すれば自由に使えます · CC BY 4.0
| 色 | 状態 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 茶色 | 正常 | 健康な消化 |
| 濃い茶色 | 多くは正常 | 高たんぱく食 |
| 黒・タール状 | 早めに受診 | 上部消化管出血、鉄剤 |
| 赤・血が混じる | 受診 | 下部消化管出血、肛門裂傷、大腸炎 |
| 黄・オレンジ | 様子を見る(続けば受診) | 肝臓や胆嚢(たんのう)の不調、食物不耐性 |
| 緑 | 様子を見る(続けば受診) | 胆汁の変化、草を食べた、消化が早い |
| 白・灰白色 | 受診 | 胆管閉塞(たんかんへいそく)、膵外分泌不全(すいがいぶんぴつふぜん) |
| 粘液がつく | 様子を見る(続けば受診) | 大腸の炎症、寄生虫 |
便のなかに見えるもの
白い米粒のような節があれば、条虫(じょうちゅう)の可能性があります。スパゲッティのような細長い虫は回虫かもしれません。見つけたら、ファスナー付きの袋に入れて動物病院に持っていきましょう。
便に少し毛が混じるのは、毛づくろいで飲み込んだもので心配いりません。急に毛の量が増えたときは、いつもより毛づくろいが多くなっているのかもしれません。
愛猫の肛門から糸・リボン・デンタルフロスのような細長いものが出ていたら、絶対に引っ張らないでください。反対側がまだお腹のなかにあることがあり、引っ張ると腸を傷つける恐れがあります。その日のうちに動物病院で診てもらいましょう。
なかなか治らない軟便
おやつの後、フードを変えた後、ストレスがあった日に一度だけ軟便が出るのは、多くの場合心配いりません。軟便が繰り返す、または 2〜3 週間以上続く場合は、長引く腸の問題が考えられます。よくある原因は次の通りです。
- 食べ物が合わない。 若い猫に比較的多い原因です。フードの成分が体に合わない猫もいて、獣医師のすすめでフードを変えると、数週間で落ち着くことがよくあります。
- 寄生虫。 ジアルジア(Giardia)などの寄生虫による軟便は、普通の下痢のように見えますが、自然には治らず治療が必要です。
- 腸の慢性的な炎症。 食事と寄生虫を除外したうえで考えます。確定には組織の検査(生検)が必要になることもあります。
- 腸のリンパ腫。 シニア猫に比較的多く、体重が少しずつ減る・嘔吐・軟便を伴うことがあります。
獣医師はふつう、糞便検査・血液検査・食事試験から始めて、必要に応じて画像診断や生検へと進めます。「3 か月様子を見れば良くなるだろう」と放置してしまうのは避けたいところです。
フードの切り替えとストレスによる軟便
新しいフードに問題がなくても、急に切り替えると腸が慣れるまでの数日間、便が柔らかくなることがあります。切り替えは 7〜10 日かけてゆっくり進めましょう。最初は新しいフード 25%+元のフード 75% から始めて、50%、75%、100% と段階的に増やしていきます。急に切り替えるのは軟便のいちばん多い原因で、いちばん避けやすい原因でもあります。
ペットホテル、引っ越し、新しい家族、来客などのストレスでも、一時的に便が柔らかくなることがあります。食欲・飲水量・元気が普段通りであれば、数日様子を見て大丈夫です。
ライフステージごとに見るポイントが違います
- 子猫は脱水に注意。 6 か月未満の子猫は、下痢ですぐに脱水を起こします。嘔吐やぐったりした様子があれば、その日のうちに受診してください。
- 成猫は変化に注目。 健康な成猫は 1 日 1〜2 回で、比較的安定しています。毎日出ていた子が急に数日出なくなる、または回数が急に増えたときは注意しましょう。
- シニア猫は便秘に注意。 腎臓病や水分不足、関節の痛みでしゃがみにくいなど、別の不調が背景にあることもよくあります。48 時間以上排便がない、または何度も力んでも出ない場合は、市販の食物繊維サプリの前に、まず獣医師に診てもらいましょう。
動物病院を受診すべきタイミング
一度きりの軽い変化なら、1 日様子を見てもかまいません。
動物病院を受診する
- ブリストル 1〜2(便秘)または 6〜7(下痢)が 24 時間以上続く
- 黄色・緑色など、異常な色が続く
- 少量の血が便についていて、他に症状はない
- 便に粘液がつく状態が1〜2日以上続く
- 軟便が 2〜3 週間以上続いている
- 家の環境は変わっていないのに、トイレの外で排便するようになった
その日のうちに受診、または救急へ
- 黒くタール状の便に加えて、歯ぐきが白い・ぐったりしている・倒れる
- 鮮やかな赤い血が多く、水様便が続く(嘔吐もあればさらに急ぎます)
- 肛門から赤い腸の一部が出ている(直腸脱(ちょくちょうだつ))
私が勤めている動物病院でも、便秘はよくある受診理由のひとつです。トイレ掃除のときに2日ほど便が見当たらないことに気づいて、連れて来られる飼い主さんが多く、その段階では獣医師による浣腸(かんちょう)が必要になることがよくあります。人間用の浣腸剤は猫にとって有毒なので、自宅では決して使わないでください。詳しくは便秘のガイドをご覧ください。
オス猫が力んでいたら尿道閉塞も疑う
オス猫がトイレで何度も力んでいるのは、便秘だけでなく、おしっこが出ていないこともあります。尿道が詰まっても同じように力み、24〜48 時間で命に関わることがあります。
尿道が詰まった猫は、尿が数滴しか出ないか、まったく出ず、トイレで鳴いたり陰部をしきりに舐めたりします。お腹も固く張ります。うんちなのかおしっこなのか判断がつかないときは、尿道閉塞と考えてすぐに救急を受診してください。
動物病院に便のサンプルを持っていく
愛猫におなかの症状があるときは、新鮮な便を持っていくと、通院の回数を減らせます。
- 新鮮なものほどよいです。 12〜24 時間以内が理想で、時間が経つと寄生虫が見つからないことがあります。
- 冷蔵庫で保存、冷凍はしないでください。 冷凍するとジアルジアの検査結果に影響します。
- 少量の猫砂がついていても問題ありません。 袋に入れて持っていきましょう。
- エンドウ豆くらいの量で十分です。
Furwise で便を記録する
毎日便を見るのは簡単でも、先週どうだったかを覚えておくのは大変です。Furwise で便の写真を撮ると、アプリがブリストルスコアを推定して色をチェックし、排便の回数も記録します。気になる変化があったときは、それまでの記録を獣医師に見せられます。
よくある質問
健康な猫の便はどのような形ですか? ブリストル 3 または 4 で、なめらか、または表面に軽くひびがあり、茶色で形を保っている便です。石のように硬い、水っぽい、粘液や血がついている場合は正常ではありません。
猫は 1 日に何回排便しますか? 成猫の多くは 1 日 1〜2 回です。消化のよいフードを食べている猫では 2 日に 1 回でも正常な場合があります。数日まったく出ない、または急に回数が増えた場合は注意しましょう。
猫はどのくらい便が出なくても大丈夫ですか? 48 時間以内なら、たいていは心配いりません。食べる量が少なかった日はなおさらです。48〜72 時間を超える、または何度も力んでも出ない場合は受診しましょう。シニア猫や腎臓病の猫は便秘になりやすいので、よく様子を見てあげてください。
フードを変えてから軟便になりました。どうすればよいですか? 腸が新しいフードに慣れるまでには時間がかかります。7〜10 日かけて少しずつ切り替えると、たいていは軟便を防げます。最初の 1 週間に少し柔らかくなるのは心配いりませんが、2 週間たっても戻らない場合は、そのフードが愛猫に合っていないのかもしれません。
猫がトイレの外で排便するのはなぜですか? 体の不調が原因のことがあります。便秘や、下痢で間に合わない、排便が痛くてトイレを避けるようになった、などです。トイレが汚い、引っ越し、多頭飼育のストレス、砂を変えたといった環境が原因のこともあります。急に始まり、力んでいる・軟便が出ているといった様子もあれば、まずは体の問題として受診してください。
猫に軟便対策で乳酸菌(プロバイオティクス)を与えてもいいですか? 役に立つこともありますが、菌株や量、軟便の原因によって効果に大きな差があります。与えるなら猫専用の製品を選び、人間用のヨーグルトや出所のわからないサプリは避けましょう。軟便が数週間続いている場合、プロバイオティクスは獣医師の診察の代わりにはなりません。
参考文献
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