爪のケアは、つい後回しになりがちなお世話のひとつですよね。爪の中に血管が通っていると知ると、爪切りを手に取るだけで少し怖くなります。爪とぎにも悩まされがちで、部屋の隅に置いた爪とぎ器は使われないまま、ソファが少しずつボロボロになっていきます。愛猫の爪に飼い主さんがしてあげることは2つです。伸びすぎたら定期的に切ってあげること、そして爪とぎができる良い場所を用意して、あとは猫自身に任せることです。
爪切りは本当に必要?
室内で暮らす猫には、たいてい定期的な爪切りが必要です。爪とぎをよく使い、よく上り下りする猫は爪がすり減りやすいので間隔をあけても構いませんが、まったく切らなくてよい猫はあまりいません。
こまめに切ったほうがよいのは、あまり活発でない猫、針のように鋭い爪をもつ子猫、そして爪が以前のように自然にすり減らなくなったシニア猫です。どのくらいの間隔で切るかは、決まったカレンダーよりも、爪の様子を見て決めましょう。2週間に1度ほど、肉球を軽く押して爪を出し、よく見てあげてください。爪先が伸びてきている、強く曲がっている、カーペットや衣類に引っかかるようなら、切りどきです。問題なさそうなら、まだ切らなくて大丈夫です。多くの猫は2〜4週間に1度くらいが目安です。
爪の切り方|手順を解説
道具は猫用の爪切りを使いましょう。はさみ型でもギロチン型でも構いません。どちらも曲がった爪の形に合わせて作られていて、扱いやすく、値段も手ごろです。人間用の爪切りでも切れますが、その場合は向きを変えて、刃が上下方向に入るようにしてください。左右からはさむと爪が割れやすくなります。猫用には別のものを用意し、ご自身のものと共用しないようにしましょう。
いつ切るか、どう抱えるかも、道具と同じくらい大切です。眠くてリラックスしているタイミングを選び、遊びに夢中なときは避けましょう。おやつもいくつか手元に用意しておきます。首の後ろをつかんだり、体を押さえつけたりしてはいけません。爪切りそのものを怖がるようになり、次回はもっと切りにくくなります。猫が暴れる場合は、タオルでゆるく包み、一度に1本の足だけを出すようにすると、無理に押さえ込まずに支えられます。
子猫のうちは、上手に切ることよりも爪切りに慣らすことを優先しましょう。まずは1週間ほど、足先にそっと触れ、軽く押して爪を出し、そのたびにおやつをあげて、爪切りを特別なことではなくしていきます。小さいころから慣らしておくと、大人になってからの爪切りがぐっと楽になります。体をさわられることへの慣らし方は、子猫のお迎えの記事でも紹介しています。
切るときは、足をやさしく持ち、肉球を軽く押して爪を1本出します。爪の中の、ピンク色に透けて見える部分を探しましょう。血管と神経が通っている部分です。切ってよいのは、透明または白っぽい先端だけで、ピンク色が始まる手前2ミリほどのところで止めます。ピンク色の部分まで切ってしまうと痛みがあり、出血もしますので、迷ったら少なめに切りましょう。爪が黒っぽくて中がまったく見えない場合は、いちばん先の細く曲がった部分だけを切れば十分です。黒い爪が不安なら、獣医師やトリマーに実際にやって見せてもらうとよいでしょう。
一度ですべての爪を切り終える必要はありません。1〜2本切って、おやつを少しあげ、ひと休みする。それで十分です。怖がっている猫を18本すべて切り終えるまで座らせておくより、ずっとよい方法です。手をかけたいのは、主に前足の爪です。後ろ足の爪は伸びるのがゆっくりで先も丸く、多くの猫は自分で整えています。ただし、狼爪(ろうそう)を忘れないようにしましょう。前足の内側の少し高い位置にある、親指のような爪です。床に触れないため、いちばん伸びすぎやすい1本です。
深爪して血が出てしまったら
爪切りに慣れた飼い主さんでも、一度は経験するものです。深爪は小さなけがです。血が出て愛猫も嫌がりますが、あわてずに対応しましょう。止血剤をひとつまみ爪の先につけ、数秒間やさしく押さえます。止血剤が手元になければ、片栗粉やコーンスターチで代用できます。出血はたいていすぐに止まります。その日の爪切りはそこで終わりにしましょう。猫がパニックになっているなら、押さえつけてまで止血を続けないでください。強く噛まれるほうが、よほど大きなけがになります。10分ほどたっても血が止まらないとき、爪が裂けたり、一部はがれかけたりしているとき、指が腫れたり猫がその足をつこうとしないときは、動物病院に連絡しましょう。
どうしても飼い主さんに爪を切らせてくれない猫もいます。私が勤めている動物病院にも、そういう猫を連れて来られる飼い主さんがときどきいます。タオルで包んだり、1人がペースト状のおやつをあげて気をそらしている間に、獣医師が手早く切ったりします。ご家庭でも、1人がおやつをあげて、もう1人が切る、という方法を試してみてください。
伸びすぎた爪・巻き爪とシニア猫
爪が自然にすり減ることも、切ってもらうこともないと、丸く曲がりながら伸び続けます。いちばん問題になりやすいのは狼爪です。放っておくと、伸びすぎた爪はぐるりと一周して、肉球に食い込んでしまうことがあります。これが巻き爪(まきづめ)で、痛みをともない、感染を起こすこともあります。巻き爪のある猫は、足を引きずる、その足をしきりになめたり噛んだりする、さわらせたがらない、といった様子を見せることがあります。
巻き爪はシニア猫によく見られます。年をとった猫は動く量が減るため、爪のすり減りも少なくなります。爪そのものも、加齢とともに厚く、もろくなることが多く、古くなった外側の層もはがれにくくなります。高齢の猫と暮らしているなら、足のチェックを習慣にしてあげましょう。シニア猫のケアの記事では、ほかにも気を配りたい小さな変化を紹介しています。
巻き爪は、自宅では対処できません。爪を肉球から外し、傷ついた部分を手当てするには、たいてい動物病院での処置が必要で、猫が痛がったり暴れたりしないよう、鎮静をかけることもあります。処置自体はそれほど複雑ではありません。そのあとは、その爪を定期的に短く切って、同じことをくり返さないようにしましょう。
猫にとって爪とぎが必要な理由
爪のお手入れの残りは、猫が自分でしています。爪は層になって伸びていき、爪とぎをすると古くなった外側の層がはがれて、その下の鋭い新しい爪が現れます。爪とぎ器やラグの上に、中が空洞になった薄い爪の殻が落ちていることがあります。爪とぎは全身のストレッチにもなり、肉球にある臭腺(しゅうせん)から出るにおいと、目に見える引っかき跡という2種類のしるしも残します。どちらも縄張りを示すマーキングです。
爪とぎは正常で健康的な行動なので、しつけでやめさせる必要はありません。飼い主さんが工夫できるのは、どこでとぐかです。爪とぎ器をソファより見つけやすく、とぎ心地のよいものにしてあげれば、家具で爪をとぐことは自然と減っていきます。
家具での爪とぎを解決するには
猫が家具を選ぶのには、ちゃんとした理由があります。ソファの肘かけは背が高く、どっしりと安定していて、部屋の中心にあり、爪にあたる感触も気持ちよいものです。ソファから気をそらすには、こうした点でソファに負けない爪とぎ器を用意してあげましょう。
まずは高さです。縦型の爪とぎ器は、猫が体を上に伸ばしきった姿勢でとげる高さが必要で、多くの成猫では90センチ以上が目安です。背の低いものでは十分に伸びられず、猫は使わなくなります。安定感も同じくらい大切です。寄りかかったときにぐらついたり倒れたりすると、猫は一度で使わなくなり、またソファに戻ってしまいます。重さのある土台のものや、壁や床に固定できるタイプを選びましょう。
素材や形は、いくつか試してみるとよいでしょう。多くの猫は麻縄をすぐに気に入りますし、段ボールも人気です。床に置いた平らな板やマットで、水平にとぐのを好む猫もいます。縦型の高いものと平置きのものを両方用意して、どちらをよく使うか見てみましょう。
爪とぎ器は、置き場所がよくないと使ってもらえません。猫がもともととぎたがっている場所、つまりよく爪をとがれてしまう家具のすぐそばに置きましょう。めったに入らない部屋の隅では、置いていないのと同じです。猫は寝起きや、帰宅した飼い主さんを出迎えるときにも爪をとぎたがるので、お気に入りの寝場所のそばや出入り口の近くに置いた爪とぎ器は、よく使われます。家が広い場合や、複数の猫がいる場合は、1つでは足りないことがほとんどなので、いくつか分散して置きましょう。多頭飼いの記事では、猫どうしがもめないような置き方も紹介しています。
愛猫が爪とぎ器を使ったら、静かにほめるか、おやつを少しあげましょう。そこでとぐといいことがあるとわかれば、だんだん使う回数が増えていきます。違う場所でといでも、叱らないでください。叱ると飼い主さんを警戒するようになり、見ていないときにこっそりとぐようになるだけです。ソファの特定の場所がお気に入りなら、爪とぎ器に慣れるまで、両面テープや布でそこを覆っておきましょう。
爪を切り、爪とぎ器も置いたのに、それでも物を傷つけたり人をひっかいたりすることが多いなら、ネイルキャップ(爪カバー)を検討してもよいでしょう。短く切った爪にかぶせる柔らかいキャップで、数週間ごとに付け替えます。正しく付ければ、爪はふつうに出し入れできます。
よくある質問
猫の爪は、どのくらいの頻度で切ればよいですか? 多くの猫は2〜4週間に1度が目安です。爪とぎをよく使う猫は間隔をあけてもよく、シニア猫や子猫はもう少しこまめに切ったほうがよいことが多いです。実際には、2週間に1度ほど肉球を軽く押して爪を出し、確認してみましょう。爪先が伸びている、強く曲がっている、物に引っかかるようなら、切りどきです。
人間用の爪切りで猫の爪を切ってもよいですか? 切れます。ただし向きを変えて、刃が上下方向に入るようにしてください。左右からはさむと爪が割れやすくなります。また、猫用には別のものを用意し、ご自身のものと共用しないようにしましょう。猫用の爪切りは、はさみ型でもギロチン型でも手ごろな値段で、曲がった爪の形に合わせて作られているので、扱いやすいのでおすすめです。
深爪して血が出てしまったら、どうすればよいですか? 落ち着いてください。深爪は小さなけがです。止血剤をひとつまみ、出血している爪の先につけ、数秒間やさしく押さえます。止血剤がなければ片栗粉やコーンスターチで代用でき、出血はたいていすぐに止まります。猫がパニックになっているなら、押さえつけてまで止血を続けないでください。噛まれるほうが大きなけがになります。10分ほどたっても血が止まらないとき、爪が裂けたり、一部はがれかけたりしているとき、指が腫れたり猫がその足をつかなかったりするときは、動物病院に連絡しましょう。
猫が爪切りをさせてくれません。どうすればよいですか? ゆっくり、少しずつ進めましょう。眠くてリラックスしているタイミングを選び、実際に切る前に、何回かは足先にさわっておやつをあげるだけの時間をつくります。切りはじめたら、一度に1〜2本だけにして、1本ごとにおやつをあげ、猫が嫌がりはじめる前に切り上げましょう。暴れる猫は、タオルでゆるく包むと扱いやすくなります。それでも毎回ひと苦労になるなら、獣医師やトリマーに頼めば、短時間で、猫のストレスも少なく切ってもらえます。
猫がソファで爪をとぐのをやめさせるには? 爪とぎは猫にとって必要な行動なので、やめさせるより、とぐ場所を移してあげましょう。ソファのすぐそばに、体を伸ばしきってとげる高さの、安定した縦型の爪とぎ器を置き、使ったらほめたり、おやつを少しあげたりします。爪とぎ器に慣れるまでは、ソファの、猫がよく爪をとぐ場所を両面テープや布で覆っておきましょう。叱るのは逆効果です。飼い主さんが見ていないときにとぐようになるだけです。
参考文献
- Wilson, C., Bain, M., DePorter, T., Beck, A., Grassi, V., & Landsberg, G. (2016). Owner observations regarding cat scratching behavior: an internet-based survey. Journal of Feline Medicine and Surgery, 18(10), 791-797. PMC
- International Cat Care. Scratching Behaviour in Cats. iCatCare
- International Cat Care. Trimming Your Cat’s Claws. iCatCare