猫のあごに黒いブツブツ?それは猫のあごニキビかもしれません

猫のあごに黒いブツブツ?それは猫のあごニキビかもしれません

ある日、愛猫を抱き上げたとき、あごのあたりが汚れているように見えたことはありませんか。小さな黒い粒がコショウのように皮膚にくっついていて、拭いても取れない。実はそれ、汚れではなく「猫のあごニキビ」と呼ばれる皮膚トラブルで、猫にとてもよく見られる症状のひとつです。

猫のあごニキビとは

猫のあごニキビは、正式には「ざ瘡(ざそう)」と呼ばれる角化異常(かくかいじょう)の一種です。あごの毛穴から過剰に分泌されたケラチン(皮膚のタンパク質)が毛穴の出口を塞ぎ、面皰(めんぽう)、いわゆる黒ニキビを形成します。あごは皮脂腺(ひしせん)の密度が高く、猫が自分で舐めてお手入れしにくい部位であるため、特にトラブルが起きやすい場所です。

2010年に74頭の猫を対象にした過去の症例を分析した研究では、品種・性別・年齢による発症の偏りは認められませんでした。どの猫でも発症する可能性があります(Scott & Miller, 2010)。約58%は軽度のまま、黒ニキビだけで治療の必要がない状態にとどまりますが、残りの約42%は二次的な細菌感染を起こし、より深刻な症状に進行します。

軽度と重度の違い

あごニキビの程度によって、自宅ケアで対処できるか、動物病院を受診すべきかが変わってきます。

軽度(面皰のみの段階)

あごや下唇に沿って黒い粒が見られ、触るとやや粗い感触やベタつきがある場合があります。猫自身は特に気にしていないことが多く、この状態のまま長期間変化しないケースもあります。

中度〜重度(感染を伴う段階)

赤く腫れた丘疹(きゅうしん)や膿疱(のうほう)が見られ、あご周辺の脱毛、かさぶた、出血、浸出液(しんしゅつえき)が出ることがあります。猫があごをしきりに掻いたり、物にこすりつけたりする場合は痛みやかゆみがあるサインです。重症化すると、あご全体が腫れ上がり、毛嚢炎(もうのうえん)に進行することもあります。

軽度であれば自宅でのケアで十分なことがほとんどです。赤みや腫れが見られたり、愛猫が不快そうにしている場合は、獣医師に相談してみましょう。

考えられる原因

獣医皮膚科の教科書では、猫のあごニキビは「特発性」、つまり根本原因が明確にはわかっていない疾患として分類されています(Miller et al., 2013)。ただし、いくつかの関連因子はよく知られています。

プラスチック製の食器は最もよく指摘される要因です。プラスチックは表面に傷がつきやすく、その傷の中に細菌が繁殖します。食事のたびに愛猫のあごが細菌の膜(バイオフィルム)で覆われた表面に触れてしまいます。対照試験による十分なエビデンスはまだありませんが、臨床現場では一貫して報告されており、食器の交換は獣医師の標準的なアドバイスです。(食器選びについては水分補給ガイドでも詳しく紹介しています。)

あごは猫が自分では舐めにくい部位であるため、皮脂や汚れが他の部位よりも蓄積しやすいことも一因とされています。

ストレスや体調の変化で免疫系やホルモンバランスが乱れると、皮脂腺の活動が活発になり、症状に影響することがあります。

また、二次的な細菌感染は症状を悪化させます。22頭を対象にした研究では、45%で細菌(主にブドウ球菌)が、18%でマラセチア酵母菌が検出されました(Jazic et al., 2006)。これらはニキビの直接的な原因ではありませんが、軽度の面皰から痛みを伴う感染症へと悪化させる要因になります。

自宅でできるケア

軽度の場合(黒い粒のみで、赤みや腫れがないとき)は、以下の方法を試してみましょう。

まず、食器をステンレス製または陶器製に変えることをおすすめします。多くの獣医師が最初に提案するケアです。食器は毎日洗いましょう。

次に、温かい蒸しタオルをあごに数分あてて、詰まった角質を柔らかくします。1日1〜2回が目安です。蒸しタオルのあとは、湿らせた布でやさしく拭き取ってあげてください。黒い粒を無理に取ろうとしたり、押し出したりするのは避けましょう。

軽度のあごニキビは見た目の問題にとどまることがほとんどです。愛猫が気にしておらず、赤みもなければ、過度なお手入れはかえって皮膚を傷つけてしまうことがあります。

人間用のニキビケア製品(過酸化ベンゾイル、サリチル酸など)は、獣医師が猫に安全な処方を指定しない限り使用しないでください。人間用の濃度は猫の皮膚を刺激したり、やけどのような炎症を起こすことがあります。

動物病院を受診すべきタイミング

以下の症状が見られたら受診をおすすめします

  • あごに赤く腫れた、痛みのあるできもの
  • かさぶた、出血、または分泌物
  • 愛猫がしきりにあごを掻いている
  • あごの腫れが悪化している
  • 自宅ケアを2〜3週間続けても改善が見られない

獣医師は外用抗菌薬(ムピロシンは25頭の猫を対象とした試験で良好な結果が報告されています。White et al., 1997)、薬用ワイプ、重症の場合は全身性の抗菌薬を処方することがあります。また、ノミの糞や真菌感染、好酸球性肉芽腫(こうさんきゅうせいにくがしゅ)といった似た症状の疾患を除外するための検査も行われます。

スタッドテイルとの関連

猫のあごニキビとスタッドテイル(尾腺過形成(びせんかけいせい))は、実は同じタイプの問題が異なる部位に現れたものです。どちらも皮脂腺の過剰な活動と毛穴の角化異常が関与しています。スタッドテイルは尾の付け根の上側の毛が脂でべたつき、絡まる症状で、黒ニキビを伴うこともあります。あごの場合は毛が短いため、より目立ちやすいだけです。

愛猫にあごニキビと尾の付け根のベタつきの両方がある場合、背景にある仕組みは共通しています。

よくある質問

あごの黒い粒はノミの糞ですか? ノミの糞の可能性もありますが、皮膚にしっかりくっついて取れない場合はニキビである可能性が高いです。ノミの糞は水に濡らすと赤茶色に溶けます(消化された血液のため)。白い濡れたティッシュで黒い粒を押さえてみてください。赤茶色の跡が残ればノミの糞、色が変わらなければニキビの可能性があります。

猫のあごの黒ニキビを潰してもいいですか? 避けてください。無理に押し出すと細菌を毛穴の奥に押し込んでしまい、軽度の見た目の問題が痛みを伴う感染症に発展する恐れがあります。温かい蒸しタオルとやさしい拭き取りの方が安全です。

食器をプラスチックからステンレスに変えると治りますか? 多くの猫で改善が見られます。原因は複合的なため完治を保証するものではありませんが、最もよく指摘される要因の一つを取り除くことができます。ステンレス製または陶器製の食器を毎日洗って使うことが、多くの獣医師が最初にすすめるケアです。

参考文献

  1. Scott, D. W., & Miller, W. H. (2010). Feline Acne: A Retrospective Study of 74 Cases (1988-2003). Japanese Journal of Veterinary Dermatology, 16(4), 203-209. J-STAGE
  2. Jazic, E., et al. (2006). An evaluation of the clinical, cytological, infectious and histopathological features of feline acne. Veterinary Dermatology, 17(2), 134-140. PubMed
  3. White, S. D., et al. (1997). Feline acne and results of treatment with mupirocin in an open clinical trial: 25 cases. Veterinary Dermatology, 8(3), 157-164. PubMed
  4. Miller, W. H., Griffin, C. E., & Campbell, K. L. (2013). Muller and Kirk’s Small Animal Dermatology, 7th ed. Elsevier.
  5. International Cat Care. (2023). Acne and Stud Tail. iCatCare