猫のゆっくりまばたき|意味と返し方を科学的に解説

猫のゆっくりまばたき|意味と返し方を科学的に解説

ソファでくつろいでいると、愛猫がこちらを見て、目を細め、1〜2秒ほど目を閉じてからゆっくりと開ける。うとうとしているように見えますが、実はそうではありません。愛猫は飼い主さんに語りかけています。猫の言葉では、この動きには特定の意味があります。「あなたのそばで、安心しているよ」というメッセージです。

ゆっくりまばたきが特別な意味を持つ理由

ゆっくりまばたき(スローブリンク)を理解するためには、まず一つ知っておきたいことがあります。猫の世界では、じっと見つめることは威嚇を意味します。野生の猫同士が長く見つめ合うのは争いの前兆になることが多く、その時間が長いほど緊張感が高まります。

そのため、愛猫が飼い主さんの前で意図的に目を閉じるのは、自分から一時的に「見えない状態」を作っているということです。これは強い意味を持つサインで、「危害を加えないと感じているから、警戒を解くね」と伝えているのです。

見知らぬ人や警戒している相手に対して猫が長くじっと見つめ続けるのも、同じ理由です。「観察」しているだけではなく、警戒しているのです。その猫が飼い主さんに対してゆっくりまばたきをしたら、警戒は解かれたと考えてよいでしょう。

ゆっくりまばたきの研究でわかっていること

2020年にイギリスの研究チームが、家庭で暮らす猫45頭を対象に2つの実験を行い、この行動が本当に「コミュニケーション」として機能しているのかを確かめました。

1つ目の実験では、飼い主さんが愛猫から約1メートル離れた場所に座り、ゆっくりまばたきを行いました。その様子をカメラで記録した結果、何もしない条件と比べて、飼い主さんがゆっくりまばたきをした条件のほうで、目を細めたり同じようにゆっくりまばたきを返したりする反応が明らかに多く見られました。

特に興味深いのは2つ目の実験です。今度は、その猫と初対面の研究者がゆっくりまばたきをしてから手を差し出しました。比較のために、無表情でじっと見つめるだけの条件でも同じ手順を行いました。結果として、ゆっくりまばたきを受けた猫は、より多くまばたきを返しただけでなく、知らない人の手に自分から近づく割合も明らかに高まりました。

つまり、ゆっくりまばたきは「猫が飼い主さんを好きだからするもの」というだけではありません。飼い主さんから猫に向けて行った場合でも、愛猫がより距離を縮めてくれる可能性が高まるのです。実験で効果が確認されている、数少ない「猫との具体的なコミュニケーション方法」の一つと言えます。

別の研究では保護施設の猫を対象に同じ行動が調べられ、人間に対してゆっくりまばたきをよく返す猫ほど、譲渡が決まるまでの日数が短い傾向があると報告されています。人間側も無意識のうちに「この猫は心を開いている」と感じ取っているのでしょう。

愛猫にゆっくりまばたきを返す方法

やり方はとてもシンプルですが、いくつかのコツがあります。

まずは愛猫がリラックスしている時間を選びましょう。食事中、睡眠中、窓の外の鳥に集中している時などは避けたほうがよいでしょう。愛猫から1メートルほど離れた場所に座り、視線が同じ高さか少し低い位置になるようにします。そして次の手順を試してみましょう。

  1. 微笑むときのように自然に目を細めます。じっと見つめたり、強く目を閉じたりしないようにします
  2. 1〜2秒ほど、ゆっくりと目を閉じます
  3. ゆっくりと目を開け、数秒待ってからもう一度繰り返します

愛猫が半まばたきや目を閉じる動作を返してくれたら、コミュニケーションが成立した瞬間です。視線をそらしたり、その場を離れたりした場合は、それも一つのサインで、「もう十分」と伝えています。これはごく自然な反応で、嫌われているわけではありません。

避けたいのは「まばたきをせずにじっと見つめる」ことです。どれだけ優しい気持ちで見ていても、猫の言語では威嚇として伝わってしまいます。ゆっくりまばたきが効果的なのは、まさに猫にとって不快な「途切れない凝視」をいったん中断する合図になるからです。

「信頼している」サインは他にも

ゆっくりまばたきは比較的わかりやすいサインの一つですが、それだけが信頼の表現ではありません。愛猫の気持ちをより総合的に読み取りたい方は、猫のボディランゲージ完全ガイドで、尾、耳、姿勢のサインも合わせて確認してみましょう。

ゆっくりまばたきと一緒に出やすい「リラックスしているサイン」には、次のようなものがあります。

・尾を真っすぐ立てて、先端をクエスチョンマークのように軽く曲げている ・お腹を見せている(必ずしも「触って」という意味ではありませんが、信頼の表れです) ・体の力が抜けた状態で、低く落ち着いたゴロゴロを鳴らしている ・飼い主さんの足や毛布を、ゆっくりとふみふみしている

それぞれ単独では別の意味を持つこともありますが、いくつかが同時に見られるなら、愛猫がその瞬間とても安心していると考えてほぼ間違いありません。

愛猫が反応してくれないとき

すべての猫がすぐに反応してくれるわけではありません。緊張気味の猫や迎え入れたばかりの猫は、まだ周囲を観察している段階かもしれません。もともとアイコンタクトが多くない性格の子もいます。タイミングも重要で、家のどこかから聞こえる音に意識が向いているときには、反応が返りにくくなります。

愛猫が一番リラックスしている時間を狙うとよいでしょう。食後すぐ、お気に入りの場所でくつろいでいる時間、家の中が静かなタイミングなどがおすすめです。何度か試してみて、焦らずに続けてみましょう。ゆっくりまばたきは「優しい挨拶」のようなもので、反応を強要する合図ではありません。

ただし、愛猫が長い期間にわたって、飼い主さんが近づくたびに緊張する、隠れる、瞳孔(どうこう)が開くといった様子を見せる場合は、ゆっくりまばたき以前に環境のストレスが原因かもしれません。その場合は猫のストレスサインの見分け方を参考に、まずは生活環境を整えてあげましょう。

よくある質問

愛猫がゆっくりまばたきをするのは「愛しているよ」という意味ですか? より正確に言うと「あなたのそばで安心しているよ」というメッセージです。猫の世界では、目を閉じることは「警戒を解いている」ことを意味します。じっと見つめることが威嚇に当たるためです。研究でも、人が先にゆっくりまばたきをした場合、猫が同じように返してくれる傾向があると確認されています。「愛している」と直訳できるわけではありませんが、猫が見せてくれる信頼の表現の中で、最も強いものの一つと言えます。

愛猫が返してくれないのは、嫌われているからでしょうか? そうとは限りません。タイミングが合っていなかったり、別のものに意識が向いていたり、もともとアイコンタクトをあまり使わない性格だったりすることもあります。返してくれないからといって拒絶ではありません。リラックスしている時間に、何度か試してみましょう。

初対面の猫にも効果はありますか? はい、あります。研究では、初対面の研究者がゆっくりまばたきをした後、猫がまばたきを返すだけでなく、差し出された手にも自分から近づいてくる傾向が確認されています。来客時、迎え入れたばかりの猫、保護施設や動物病院にいる猫にも試してみる価値があります。

まばたきをせずに猫をじっと見つめるとどうなりますか? 猫の言葉では「持続的な凝視」は威嚇に当たり、ストレスを感じさせる可能性があります。猫とアイコンタクトを取りたいときは、数秒ごとにゆっくりまばたきを挟むか、視線をやや外すようにしましょう。長く視線を固定しないことが大切です。

参考文献

  1. Humphrey, T., Proops, L., Forman, J., Spooner, R., & McComb, K. (2020). The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication. Scientific Reports, 10, 16503. Nature
  2. Humphrey, T., Stringer, F., Proops, L., & McComb, K. (2020). Slow blink eye closure in shelter cats is related to quicker adoption. Animals, 10(12), 2256. PMC